見出し画像

【読書】万里の長城を手掛かりにした中国史入門~『万里の長城』(加古里子・文、加古里子/常嘉煌・絵)

構想30年、制作期間5年の、万里の長城を手掛かりにした中国史入門と言うべき、大作です。


この絵本のことは、「ビッグイシュー日本版」の2021年8月1日号で触れられていました。出版に至るまでの加古さんの苦労も載っており、興味を持ったので読んでみました。


一応分類としては絵本ですが、文章の量も多く、内容もかみ砕いているようで結構難しいので、ちょっと小学生以下では歯ごたえがありすぎかもしれません。もちろん、中国に興味がある小学生なら、食いついていけると思いますけど。


「万里の長城を手掛かりにした中国史入門」と説明しましたが、実は話は地球誕生から始まります。その後、生物の進化と人類誕生が描かれ、そして中国文明の誕生に至ります。


わずか64ページの分量で、地球誕生から始まる中国史が描かれるわけですから、もちろん省略されていることは山ほどあります。でも中国史の概観はつかめると思いますし、中国史について一通り知っている人でも、万里の長城をキーワードにして捉えているので、新たな視点を得られることでしょう。万里の長城が持つ意味が、時代ごとに変遷していったことなど、中国史を中高生に教える機会がある私にとっても、目から鱗の発見が、いろいろありました。


もちろん瑕疵がないわけではなく、チベット仏教を「ラマ教」と表記しているのは、どうかと思いますし、いささか中国共産党寄りの観点で捉えた歴史かなとも思います。でも、そんなことは些細な問題でしょう。


後世に残すべき大作です。


見出し画像には、万里の長城の写真を使わせていただきました。




いいなと思ったら応援しよう!

margrete@高校世界史教員
記事の内容が、お役に立てれば幸いです。頂いたサポートは、記事を書くための書籍の購入代や映画のチケット代などの軍資金として、ありがたく使わせていただきます。

この記事が参加している募集