「訳者あとがき」が良い~『空を駆けるジェーン』(アーシュラ・K・ル・グウィン著、村上春樹訳)~
「空飛び猫」シリーズの第4弾、かつ最終巻です。春樹さんは「訳者あとがき」で「『空飛び猫サーガ』のような趣さえだんだんでてきました」と書いていますが、そうはならなかったわけです。続きは読者の想像に任せる、ということでしょうか。
↑文庫版
今巻では、前巻でめでたく失語症から回復した、空飛び猫五きょうだいの末っ子のジェーンが、のんびりした農場暮らしに飽き飽きし、都会に旅立ちます。
お姉さんのセルマの言う意味が本当には分かっていなかったジェーンは、都会に行き、とんでもない目に遭います。刺激を求めるジェーンは、前巻のアレキサンダー同様、中二病とも言えます。
物語の終盤、ジェーンはセルマの言葉と似たことを、別の登場人物に言われるのですが、そのシーンは、なかなかしみじみします。
物語の最後にジェーンが選んだ居場所は、意外といえば意外、当然といえば当然なのかもしれません。春樹さんも「訳者あとがき」で書いています。
「訳者あとがき」からの引用ばかりで恐縮ですが、「超能力は才能=贈物(ギフト)であるわけですが、同時にそれは呪いでもあります」という言葉に始まる、特別な才能についての春樹さんの考察は、なかなか読みごたえがあります。もちろんアーシュラさんの原作自体が優れているわけですが、春樹さんの訳注と「訳者あとがき」が、このシリーズの良さを更に引き立てていると思います。
見出し画像には「みんなのフォトギャラリー」から、黒猫ちゃんの写真をお借りいたしました。
いいなと思ったら応援しよう!
記事の内容が、お役に立てれば幸いです。頂いたサポートは、記事を書くための書籍の購入代や映画のチケット代などの軍資金として、ありがたく使わせていただきます。