この本は、確か『新生 生命の教養学Ⅹ』で紹介されていて、興味を持ちました。当時の徳仁親王、つまり今の天皇陛下の皇太子時代のご講演の記録です。
失礼ながら、水運史に格別の興味があるわけではないのですが、この本は読んでいて大変面白く、結構なスピードで読み進めてしまいました。良い例かは分かりませんが、「ブラタモリ」は回によっては観る前はそれほどの興味が持てなくても、観始めるとタモリさんや各回の専門家の先生の話に引き付けられ、「へー」とか言って、最後まで楽しく観てしまうのですが、それに近いものを感じました。それほど興味があるわけでもなかったはずの淀川やテムズ川の話を、楽しく読んでしまうのです。
印象に残った部分。
庄内の本間家が防砂林を作ったように、日本の各地に人々のためになる事業を行った豪農がいたのですね。
水に限らず、様々な事柄において、分野横断連携の必要がありますよね。
サハラの「リンを含む大量の砂」のおかげで、「アマゾン川流域の肥沃な土壌における豊かな生態系が維持されて」いるそうです。
人が曳いたのですか……。
ちなみにイギリスでも、船を人力で動かすケースもあったそうです。
更に付け加えると、イギリスの川や運河では川を上る時だけではなく、下る時にも馬で曳くこともあるとか。
木材にも、一石という単位があるのですね。
モダン・ヒストリーの幅、広すぎます(@_@)
この馬車問題、村上春樹の『遠い太鼓』でも謎として指摘されています。
結局日本で馬車が発達しなかった理由は、何なのでしょうね。
<追記>
都の周辺を除き、道路の舗装がされなかったため、馬車が通るのは不可能だったようです。
研究生活のご苦労がしのばれます。しかし傘を盗んだ人、どなたの傘か知らなかったんでしょうね。
これまた、ご苦労がしのばれます。でもちょっと、笑ってしまいました。
なおこの件は、更に続きがあります。
笑い話から、ちょっとはっとさせられる話に繋げていく、この話術(と申し上げて良いのでしょうか)は見事です。
まさかここで、イベルメクチンの話につながるとは。
なお最後に、「第2回国連水と災害に関する特別会合」における英語の基調講演の記録が載っているのですが、この英語が平易な表現が使われており、とても読みやすいのが印象的でした。もちろん専門用語等、分からない単語はあるのですが、それでも日本語同様、するする読める文章なのです。お人柄がしのばれます。日本語・英語共に、このような魅力的で味わい深い文章を書けるようになりたいと思いました。
見出し画像は、奈良の元興寺のお庭で撮ったものです。