スカイエマさんの絵が目につき、手に取ってみました。
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子ども向けの時代小説です。本能寺の変や秀吉の朝鮮出兵などが背景として描かれていますが、主人公は架空の人物なので、歴史小説ではありませんね。
子ども向けを意識しすぎたのか、文章の達者な子どもが書いたような文体が、ちょっと気になりました。しかし後半になると、自然な文体になっていきます。
武士の子でありながら、こんなことを考えてしまう平史郎が主人公です。紆余曲折の末、彼は縫い物師となります。
母と別れる際、平史郎が言われた言葉です。
最後の段落の記述が史実にのっとっているかは分かりませんが、そうであっても不思議ではないくらい、対馬は距離的にも文化的にも朝鮮半島に近いのだと、実感しました。
この記述も史実かは分かりませんが、そういう義侠心のある人たちがいたのであってほしいです。
ちなみにこのお話、途中からはジュリアおたあ(おたあジュリア)の話になっていきます。もちろん最後まで、表面上の主人公は平史郎ですが。しかしキリシタンとなったおたあが、頑なに神社に行くことすら拒むシーンはリアルです。信者になって浅い人が見せる頑なさですよね。信仰が熟成されてくると、他の信仰にも寛容になっていく人が大半ですが。
この疑問が、ラストに向けた伏線と言えます。初出は『百万人の福音』ですし。まぁ考えてみたら、伏線は最初からあったと言えますね。
キリスト教(他の宗教もそうかもしれませんが)が抱える最大の疑問の一つである、「神がいるのなら、なぜ戦争や災害が起きるのか」という問いへの答えが書かれています。これに納得がいくかは、人それぞれだと思いますが。
最後は結局「神落ち」というやつで、ややがっかりしたところもあります。感動のラストだと思った方には、申し訳ありませんが。あの後平史郎がどのような道を選ぶかは、書かれていないものの、ほぼ明らかですし。
武士の家に生まれた男子でありながら、縫い物師の道を選ぶ主人公という設定が面白かっただけに、結局描きたかったのは「それ」か、と思わなくもありませんが、戦国時代末期をちょっと珍しい視点から描いた作品であることは、確かです。
見出し画像は伏見城です。遊園地のアトラクションの一つとして建てられたもので、作品当時の姿ではありませんが。
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