【読書】苦手意識が薄らいだ~『グリーン・グリーン』(あさのあつこ)~
私は個人的に、あさのあつこの作品が苦手です。苦手と言いつつ、結構な冊数を読んでいるのですが、ある段階で「あさのあつこの作品は、もう原則読まない」と決めました。
もちろん私が読んだ作品の他に、良いものがたくさんあるであろうことは承知です。でも読める本の冊数には限りがあるので、苦手な作者の作品を読む時間を、他の作者の作品を読む時間に当てた方が良いと思ったので。
ですがこの「グリーン・グリーン」シリーズは、たまたま作品紹介を読み、ちょっと面白そうだと思ったので、読むことにしました。
↑kindle版
読んですぐ、「うわ、やっぱり」と思いました。私があさの作品が苦手な理由の1つが、登場人物の名前です。「No.6」シリーズが代表的ですが、何か登場人物の名前が凝りすぎで、あざといんですよね。今回も主人公が翠川真緑(みどりかわみどり、通称グリーン・グリーン)、同僚の先生が雪ダルマを思わせる豊福有希子、そして生徒の名前も、かなり凝っています。そもそも「中学の時からグリーン・グリーンって渾名」って、そんな長い渾名が中学・高校・大学・社会人を通してずっと付くかいな、と思ってしまいました。最初は「グリーン・グリーン」だったとしても、すぐに略されて「グリグリ」とかになりそう。
一方で、以前読んでいた時との違いも感じました。私があさの作品が苦手な理由その2が、もうちょっと書き込んで良いというか、書き込んでほしいところを書き込まないことなのですが、今回はその不満は感じませんでした。もちろん書き込みすぎてもおらず、良いバランスかな。
そろそろ、作品そのものについて書きます。この作品は、地方の農林高校に新任として就職した真緑の、教員としての成長物語なので、同業者として「分かる分かる」というところや、「それはダメでしょ」と思うところが、たくさんあります。
これ、よく分かります。真緑はその後、自分の授業の問題点に気付くことになりますが、問題点に気付いても、それをすぐに改善できるかは、別問題なわけで。
印象に残った言葉。
地理を教える時には、農業における後継者不足の問題を扱うこともありますが、その理由として、農業の大変さとか、後継者となるべき若者の都会への憧れなどをあげてきました。でも、継ぎたくても継げない、という可能性には思いが至っていませんでした。
この直前に、親の跡を継いで牧場をやりたかったのに、牧場が赤字続きで、とても給料を出せるような状況じゃなかったので、「無休で働くわけにもいかんし……しょうことなしに、後を継ぐのを諦めた」青年の話が出てきます。この作品は「日本農業新聞」に連載されたもので、あさのさんは相当取材もしたことでしょうから、このようなケースは少なからず本当にあるのでしょうね。
本当に!
真緑の勤める喜多川農林高校の「文化祭と収穫祭を結びあわせたような」行事が穀菽祭(こくしゅくさい)と名づけられていて、その由来です。菽という漢字は、初めて目にしました。
読了して、あさの作品への苦手意識が、だいぶ薄らいでいることに気付きました。少なくとも続編は読みますし、他の作品についても、機械があれば読んでも良いかな、と思えるようになりました。
見出し画像は、穀菽祭で生徒たちが売った花の1つであるポインセチアです。
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