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私はダメな母親なんです

【女性のための心療内科、はじまりの言葉】


フローレンスこどもと心クリニックで女性のための心療内科を担当する浦川です。


私の初診外来は「今日は来てくださってありがとうございます」から始まる。これは、自分の外来を選んでくださったことへの感謝、でもあるのだが何より、

「自分の悩みや不調から目を逸らさずに、自分と向き合う時間を作ってくれてありがとう」
という意味を込めている。

受診をする、というのは、自分の不調に気づき、改善したいと思えるからこそ起こる行動である。

自分の不調に気づく、というのは自分と向き合わないとできないこと。自分を大切にしている証である。
助けを求められる、というのは立派なスキル。人を信じていないと、助けを求めることはできない。

信じて受診してくださった方が来て良かったと思えるよう、自分ができることをやる。
私は魔法使いでもなんでもない。一度で全てが解決するとは思っていない。外来はとても地味な業務である。
だけど、
人は皆回復する力を持っている。その可能性を信じて、淡々と向き合う。
ただそれだけ。


浦川医師診察風景

【私はダメな母親なんです】


「女性のための心療内科」を始めてはや8ヶ月。
開院当初からずっと通ってくださる方もいらっしゃれば、元気になって卒業していかれた方々も沢山いらっしゃる。
「もう大丈夫です」と自信を持って笑顔で卒業されていかれる方々を見送るのは、とても嬉しく、誇らしく、そして少し寂しい。
学校の先生も同じ気持ちだろうか。

小児科併設ということもあって、受診者の多くは子育て世代(その他の世代も大歓迎です!)。
不調の内容はさまざまながら、診療をする上で、子育ての悩みは切っても切り離せない。

子育て世代の患者さんが口を揃えておっしゃるのは、

「こどもは可愛いのに、つい怒ってしまう」
「愛したいのに、うまくできない」
「私はダメな母親だ」

という自責の念。年代も、家族構成も、社会的ステイタスも、全くバラバラなのに、なぜか訴えは驚くほど一緒。
これはこの外来を始めてからわかったこと。
プライベートで友人たちと話していても、同じような話を聞く。

子育てなんて、人類が始まった時代から存在していて、何兆人という人々が、何兆回も繰り返しているはずなのに、
なぜこの苦悩は共有されず、そして叡智を集結してこの苦悩が緩和されるような取り組みはないのだろうか。
もしくは取り組みがあっても、この苦悩を持つことは、(母)親としての通過儀礼なのだろうか。
これは自分にとってとても興味深いテーマである。

ただ一つ言えるのは、
もう皆さん十分頑張っている。

「人間はいつも出せる力の全力を出している」と言われている。
「もうちょっとできたはずなのに」「あとここさえできれば」という思いはあろうが、
でもそれが今の自分の精一杯なのだ。
それ以上できないのには、事情がある。

親のキャパオーバー、こどもの特性(or親の特性)、周囲の環境などなど。
皆それぞれ異なる事情を抱えている中で、精一杯できることをやっているのだ。

その自分をどうか認めてあげてほしい。
人と比べる必要はない、あなたはあなた。
もう十分頑張っている。

どうやったら楽になるか、一緒に考えていきましょう。



フローレンスこどもと心クリニックはリニューアルオープンし、1階に新たな診察スペースを設けました。落ち着いた空間でゆっくりお話が可能になりました。
浦川医師の心療内科、鹿島医師の不登校外来/発達外来は新しい診察室での診察となります。

ぜひお気軽にご相談ください。


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