歳を取る楽しみを見つけた
電車に乗っていた。
建築を学ぶため学校に通っている私はこの日、スケッチに使う鉛筆を買わなければならなかった。
授業の開始は10時。
それまでに鉛筆を用意する必要があったため、降りた駅の近くで、開いている文具店を検索すると、9時30分開店の文具店がひとつあった。
9時35分、調べた文具店の前に到着。
おばあさんが開店の準備をしていたため、[まだやっていないのでは?]と一瞬不安になったが、検索して9時30分が開店時間であることを知っていたため、
「開いていますか?」
と声を掛けた。すると優しい声で
「大丈夫だよ。」
と。
「鉛筆を買いたいんです。」
「それなら一番奥だよ。」
2Bと3Bの鉛筆を選び、
「これをお願いします。」
「330円ね。良いものを選んでもらって。バッグも可愛いね〜。」
ほんの3分ほどの出来事だったが、私はガッチリ心を掴まれた。
こんな歳の重ね方をしたい、と。
穏やかに歳を重ねると、あの素敵なおばあさんみたいにになれるのかな?
加えて、私はもうすぐ25歳になる。
希望も含むけれど、健康寿命が75歳だとして、その3分の1を迎えることになる。
ぼけ〜っと過ごした幼少期、どんな大人になりたいのか考えることから逃げていた思春期。
物事をしっかりと考えるようになったのは、ごくごく最近のこと。
それでもまだまだ、浅い考えなんだろうけど。
あと3分の2も、思考を楽しみながら歳を重ねることが出来る。
歳を取るのが楽しみになった。