京大生の本棚「星を編む」
水無瀬的昨年のベスト小説である「汝、星の如く」の続編が出ていたそうです。大学の生協ショップで見つけて、気づいたらレジに持って行き「これ下さい」していました。
大垣書店でもPOPが立てられていましたよ!
その名も「星を編む」。
「汝、星の如く」本編で語りきれなかったエピソード三編が書かれています。
以下、ネタバレ注意です。
①「春に翔ぶ」
紆余曲折あって暁海と結婚することになった、北原先生の過去がえがかれています。
本編の序盤で、北原先生には「前の奥さん=元教え子との間に娘がいる」ということが書かれていました。しかし、筆者は詠んでいて少し釈然としない箇所がありました。
それは、「奥さんが逃げた」というように描かれていたのに、実際にその「前の奥さん」にあったときも大して気まずさを感じていなさそうだったこと。
その疑問を全て解消してくれる短編でした。詳しいことは本文に譲ります。
後ろ指を指されても、愚かだと思われたとしても、自分の未来は自分で決める。当たり前のことですが、それがなかなか難しいんですよね。
印象に残ったモノローグを紹介します。のちに暁海の夫となる、北原先生の語りです。
「情けは人の為ならず」ということわざがあります。
誤用されることもありますが、本来の意味は「他人に施した親切は、回り回って自分に返ってくるものだから、人に優しくすることは自分の為でもある」という意味です。
しかし近年は世知辛い世の中になってしまったもので、他人に親切を施しても、自分に回ってこず、むしろ「この人はなんでも聞いてくれる」と舐められてしまうことがあると。切ないですね…。どこかで自分を優先しなくてはならないのです。
北原先生は、自分たちが窮していても他人を助けようとする両親を尊敬していました。しかし、「他人に分けるものがあるのなら、どうして自分(子供)につかってくれないのだろう」という恨めしさも感じていたのです。しかし、それは両親の人生を否定することになると考え、表だって反発することもできなかった。その結果、がんじがらめになってしまったと。
そんな先生は、ある教え子と出会い、驚くような決断をします。
ぜひ、本を手にとって確かめて下さいね。
②「星を編む」
青埜櫂亡き後、遺作となった小説を出版しようとする編集者たちの話です。
女性編集者・二階堂絵理と、その仕事での相方・植木が主人公となっています。
結婚、子供、仕事などなど、女性ならではの悩みが高解像度で描かれていてびっくりします。育休制度の普及で少しずつ改善してきているとはいえ、いまだに子育てと仕事の両立は簡単なものではありません。どうしたってキャリアを中断することになってしまう。
一応、属性的には女性に分類される(文体やトピック等で察されていましたでしょうか?)筆者は、将来を思うと青息吐息です。
しかし、絶望するにはまだ早い。
シンプルながらも力強い言葉です。何度折れても、追いかけることさえやめなければ夢は何度でも生き返らせることができるのです。
この短編を最後まで読むと、「星を編む」というタイトルが沁みます。
③「波を渡る」
個人的には、この話が一番心に刺さりました。名言があちらこちらに散りばめられていたので、ページの隅っこをちまちま折って忘れないようにしています。
特に印象に残った文を紹介します。
あの…何を食べたらこんな秀逸な表現ができるようになるのでしょうか。あまりに美しい言い回しに鳥肌が立つ程でした。
人に好意を持つとき、「こういうところが素敵だな」とときめくことは少なくないと思います。でもそれって、時間とともに慣れてしまうんですよね。
それでも、その人のことが好きで、一緒に居たいと思う。「どうしてなんだろうな」という疑問への最高の答えではないかなと思います。
某最強先生ではありませんが、ある意味愛ほど歪んだ呪いはないのかもしれませんね。心に刺さった甘い棘が、呪いが、抜けない…。
まとめ
そもそも「汝、星の如く」という作品自体がちょっと異次元のクオリティだったのでわっくわくしながら続編を手に取ったのですが、裏切らないどころか平気で超えてきましたね。他にも紹介仕切れなかった名文句が山ほどあるので、またつぶやきなどで紹介するかもしれません。
どうか、「汝、星の如く」という作品が人生に悩む方々に届きますように。そして、本編をお読みになった方は、この続編も必読です。感動が何倍にも深まりますよ。
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