京大生の本棚part.5〜浅倉秋成さん「六人の嘘つきな大学生」〜
「読書の秋」を自分に課しているので、バンバン書評記事を更新しようと思っております、水無瀬です。
今回ご紹介するのは、浅倉秋成さん著「六人の嘘つきな大学生」です!
「どんでん返し」という言葉は往々にしてネタバレに繋がることがありますが、この作品に関して言えば元からそれをウリにしているところがあるので(帯にも書かれていました)、遠慮なく使いたいと思います。
ご安心ください、この作品は「どんでん返し」という言葉を出したところでその魅力は少しも損なわれるものではありません。
この作品については、過度なストーリー解説は逆に無粋かという気もします。なぜなら、ひっくり返っていくストーリーをご自身の目で、頭で体感していただきたいから!
ということで、ネタバレを控えつつ、あらすじと感想を書いていきたいと思います。
あらすじ
大手IT企業「スピラリンクス」の最終選考に残った六人の大学生。与えられた課題は「グループディスカッション」。
不思議なことに本番は1ヶ月先、「うまくいけば全員採用です」と言われ、喜び、全員採用という目標に向かって切磋琢磨しあう六人。
しかし突然、
「ディスカッション当日は、六人のうち採用にふさわしい一人を選ぶための議論をしてもらう」
という方針変更がされ、六人は大いに動揺する。
そして迎えた本番。議論中に6つの封筒が見つかる。そこに書いてあったのは…
「○○は人殺し」
「●●は人でなし」
「△△は詐欺師」
などという衝撃的な文言(本当は登場人物名が明記されていますが、ネタバレ防止のため伏せています)。
会議室は密室、すなわち封筒を置いた「犯人」はこの中にいる…。
疑心暗鬼に陥る六人。
「犯人」は一体誰なのか?そして、これらの告発は事実なのか?
さて、採用されるのは一体誰なのか?
感想
あくまで個人の意見ですが、この作品のメインテーマは「就活って大変だね」ということではないと思います。
根底に流れるのは「人が人をジャッジすることがいかに難しいか」ということ。それを描くことのできる最も分かりやすくかつドラマチックな舞台が就活だったということではないでしょうか。
入試などでは「学力」というそこそこ分かりやすい基準がありますよね
(とはいえ、一発勝負ですから本番でたまたま得意な問題が出たり、不運にも体調が優れなかったりすることもあり得ますから、一概には言い切れませんが)。
一方就活において最も重要なのは
「自分は貴方(企業)が採用するにふさわしく、貴方が求めている人材ですよ」
ということをいかにアピールするかということになると思います(分かったような口を利いてしまってすみません)。
言い換えれば、「自分は御社にふさわしい人間です」という面をどこまで打ち出せるかということになる。
しかし、その一面だけが人間の全てではないですよね…実際に入社してみたら「この人、こんなところもあるのか」と良くも悪くも驚くことだって多々あるのではないでしょうか。
同じことは就活に限らず、日常生活においても言えます。
例えば、
「バスでお年寄りに席を譲っていたから人格者」
「後輩に厳しいから嫌な人だ」
ちらっと見た行動で、このように判断してしまうことってありませんか?
筆者はあります。
でも、人間性ってそんなに短絡的に決めつけて良いのでしょうか。
今あなたが見ているのは、その人の「表側」に過ぎません。地球からは月の裏側が見えないように、今見えていないだけでその人には別の一面があるのかもしれない。
しかし裏側の面が褒められたものでなかったとしても、その人の善性が損なわれる訳ではありませんよね。「良いことをした」という事実は変わらない。
筆者の推しキャラ・七海建人も言っていましたが、「世の中の多くの人間は善人でも悪人でもない」のです。
善人に見えるか悪人に見えるかというのは、その人のどの一面、どの瞬間を切り取るかで変わってしまいます。
皆の人格を完璧に把握しているのは、全知全能の神くらいなものでしょう。
身も蓋もなく言ってしまえば、人間が人間を判断するのなんて傲慢の極み。
しかし、それで開き直ってしまったら、世の中生きづらいし不便極まりない。だからどこかで折り合いをつけなくてはいけません。
それは就活であったり、入試での面接であったり様々です。
もし自分が「選ぶ側」の人間になったときは、一つのことだけでポイポイ軽率に決めつけることだけは避けたいものです。
第一印象が肝心なことは言うまでもありませんが、あまりにも引っ張られてしまうと、みすみす大魚を逃すことになりかねませんからね。
楽観的に過ぎるとは思いますが、どうせなら人の良いところを見つけたいです。
筆者が尊敬してやまないオードリー・ヘップバーンも、
「綺麗な瞳になりたければ、誰かの良いところを見つけなさい」
という言葉を遺しています。
自分の目は、誰かのあら探しをするためではなく、誰かの美点を見つけるためにあると思いたい。
本気で考察するにはまだまだ物足りない位ですが、ネタバレを防ぐためにも、文が荒れないようにするためにも、このあたりでお暇したいと思います。
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最後までお読み下さり、ありがとうございました!