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米裁判所が除草剤ジカンバの認可取り消し バイエルにまた打撃

米アリゾナ州の連邦地裁は2月6日、旧米モンサント(現ドイツ・バイエル)などが販売する除草剤ジカンバについて、米環境保護局(EPA)が承認したのは違法だとして、取り消す決定を下しました。この除草剤は危険だとする非営利組織(NPO)の主張を認めました。グリホサート問題で揺れるバイエルにとっては、新たな打撃となりました。米紙ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)は「バイエルにとって新たな不安材料」と報じています。
 
裁判所の決定を受け、取り消しを求めていたNPOの食品安全センター(CFS)などは「農家や環境にとって大きな勝利だ」と成果をアピールしました。バイエルは「謹んで反対する」と反発し、EPAに上訴などの対応を取るよう促しています。
 
ジカンバは、グリホサートへの耐性を持つようになった「スーパー雑草」への対策として、旧モンサントが開発し、EPAが2016年に認可しました。農薬の成分として、従来からのグリホサートにジカンバを加えることで、除草効果が大きく高まり、スーパー雑草を退治できるようになったというのが売りです。
 
これに先立ち、モンサントは2015年、遺伝子組み換え(GM)によって、グリホサートに加えジカンバにも耐性を持たせた大豆や綿花の認可を得ており、2017年から除草剤とGM作物をセットで販売してきました。ドイツのBASFと、中国化工集団(ケムチャイナ)傘下にあるスイスのシンジェンタも、同様の商品を投入しました。ジカンバ耐性のGM作物の作付面積は、米国で6500万エーカーに上り、大豆の3分の2、綿花の4分の3に達するとされています。
 
しかし、ジカンバは風に乗って周囲に飛散しやすいという特徴があり、近隣の農家の作物などを誤って枯らしてしまうという問題が頻発しました。農薬を散布した農家はジカンバ耐性があるGM作物を使っているため、枯れることはありませんが、周辺の農家の作物は必ずしもジカンバ耐性ではないためです。
 
こうした事態は解禁前から予想されており、CFSなどはEPAに最初から認可しないように強く求めていました。CFSは、ジカンバの飛散により、周辺農家が栽培する大豆の1500万エーカーが被害を受けたと指摘しています。
 
CFSなどの申し立てを受け、米国の控訴裁判所は2020年6月、今回と同じようにEPAの認可は違法との決定を下しています。しかし、トランプ政権下のEPAは同年10月、この決定を無視する形で、条件付きながら使用継続を認めてしまいました。CFSなどは改めて差し止めを求めた結果、再びEPAの決定は違法との判断が今回示されました。
 
アリゾナ州の連邦地裁は今回の決定の中で、EPAが2020年にジカンバを再び認可したことについて、「重大な誤りがあった」との判断を示しました。パブリックコメントなど法律で定められた手続きをきちんと行わなかったと批判した上で、「EPAが完全な分析を行えば、同じ結論には至らなかった」と指摘しました。EPAがきちんと対応していれば、再承認という結論はあり得なかったということです。この決定を受け、EPAがどういう対応を取るかが焦点となります。
 
ジカンバの使用を前提に、ジカンバ耐性のGM大豆や綿花の作付けの準備を進めていた農家も多いようで、今回の決定を受け、米国の農業界は大混乱に陥っています。米国大豆協会(ASA)は2月8日、「裁判所の決定に明らかに落胆しているが、それよりも、2024年の作付けが近づく中、農家はどうすればいいか困っている」と強い懸念を表明しました。ASAはEPAに書簡を送り、既に販売済みのジカンバについては農家に使用継続を認め、「有害で誤った裁判所の決定」を不服として上訴するよう求めました。
 
米国最大の農業団体ファーム・ビューロ(AFBF)も同じ2月8日にEPAに書簡を送り、「多くの農家はジカンバ耐性作物を使うことを既に決めていた」として主張しました。ジカンバが全く使えなくなれば、大きな混乱が起こるとの見方を強くにじませています。その上で、「農家はEPAがジカンバを認可したことを信じて、ジカンバ耐性作物に巨額の投資をしてきた。これらの製品を使えなければ、巨額投資がリスクにさらされる」として、ジカンバの在庫の使用を農家に認めるよう求めています。

(2月17日追加)
こうした要望を受け、EPAは2月14日、既に購入したジカンバについては継続使用を認めるとの通知を出しました。対象となるのは、裁判所の決定が行われた2月6日までに購入した製品です。これにより、農業界の混乱はある程度抑えられそうです。
 
ASAは直ちに声明を出し、EPAの決定を「称賛する」と表明しました。その上で、EPAに対し、上訴するとともに、上級審の判断が出るまでは、連邦地裁の決定の効力を停止する手続きを取るよう求めました。

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