誰しもがもっている家族の強みとリソースに焦点をあてる家族中心サービス
チャビ母さん(@chubby_haha)のこのnote。そして、共感のリプライを読んで、現実問題として障害をもつ方々をサポートする側が、全く家族に寄り添えていない事実に驚愕でした。
このnoteを読んで、僕の中でもいろんな感情も沸いたし、家族を支援する立場として考えさせられたこと、家族支援のために必要なことなどいろいろな気づきをもらいました。
なので今回のnoteでは、チャビ母さんのnoteから引用させてもらいながら、家族中心サービスについて僕の私見も交えてまとめていきたいと思います。
<母親の自己効力感や有能感が低下していく始まり>
赤ちゃんってね、生まれた時に”原始反射”っていう、この世に生まれて生きて行くための最低限のスキルをいくつか身に付けて生まれてくるんだよね。その一つが吸啜反射。これはお母さんの乳首などが口に入ってきたときに強く吸う赤ちゃんの生まれ持った反応なんだけど、息子はおっぱいの飲み方を知らないまま生まれてきちゃったんだよね。だから、さほど吸わなくても飲める哺乳瓶からミルクは飲めたんだけど、母乳は飲めなかったんだよね…
でもその頃の私にはそんな知識がなかったから「なんで私はこんなにダメな母親なんだろう」と息子誕生のその日から自分を責め続けたし、周囲からも「おっぱいの飲み方を知らない赤ちゃんなんて聞いた事がない」と暗に責め続けられたんだよね…。
乳児のころは生きていくために母親と2人3脚で頑張っていくため、どうしても母親に依存してしまいます。そういった育児の中でうまくいかないことがあると、どうしても母親は自分を責めてしまうんでしょう。。そして、周囲も「なにも自分でできない赤ちゃん」だから、母親に(悪気はないにしても)冷たい言葉をかけてしまうんだと思います。そして、出来ることといえば「泣いて訴える」ことがあると思いますが、それが何をやったら泣き止むのかわからない⇒泣き続ける⇒いろいろ試す⇒それでも泣き続けるという悪循環が更に自分を責め続けることに繋がっていくのでしょう。
こうした経験から、家族特に母親は、母としての自己効力感や有能感というものが低くなる方が多く、そのため例えば短期入所などお預かりのサービスを使用する際に罪悪感を感じてしまうお母さんが多いように感じます。
サポートする側は、この時点では関りはもてませんし、ファーストコンタクトの段階で、こんな風に悩んでてと伝えられるお母さんもいないでしょう。だからこそ、こういった悩みを抱えてる・経験をしてきているということを忘れずに対応しないといけないと思います。
<家族とのパートナーシップ>
もし、こうした悩みや経験をしてきていることを想像できないと
「もっと障害の重い子なら今すぐ療育園に通えるけど、息子さんは無理です。とりあえず福祉事務所に行ってください。あとは本とか買って読んでみてください」と。
真っ暗なトンネルに置き去りにされた瞬間だった…。
こんな発言をしてしまうんですよね。。
いやいや何のためにあんたらがいるん。。。
チャビ母さんはアメリカへ移住されていますが、きっとこれが原体験にあるからでしょう。
確かに、子供の発達は家族内で展開されていくため、家族が知識や技術をもてるようにサポートしていくことも我々サポート側は必要です。しかし、「家族」と「専門職」の間には知識とスキルの大きなギャップがあるため、それらを解決していく家族中心サービスのアプローチの一つに
両親に子供の状態のことやそれらに関する情報を提供すること
が挙げられます。
しかし、家族の背景やここまでに至った経緯などを想像せずに、知識や技術を身につける「手段」だけを教えても意味がありません。確かに、福祉事務所に行くことや本などを買って知識を得ることも必要かもしれませんが、そこに家族中心サービスについてまとめているnoteでも書いている通り、パートナーシップがなければ何も意味を持ちません。
家族の悩みや不安などが共有できないと、チャビ母さんの言われる「奈落の底に落とすだけの確定診断」になってしまいます。
そして、最初の入り口でこうした経験をしてしまうと、支援体制に対して常に疑問をもっていかなければならなくなります。
だからこそ、医療・福祉・教育、療育に関わる人たちに家族中心サービスの考え方が根付いてほしいと強く思いました。
<両親と同じ道を歩んできた人をつなぐこと>
家族中心サービスにおけるアプローチの一つに、「両親と同じ道を歩んできた人をつなぐこと」があります。
現在、ペアレント・メンターという制度もでき、少しづつ拡がりをみせていると思います。
ペアレント・メンターとは、自らも発達障害のある子育てを経験し、かつ相談支援に関する一定のトレーニングを受けた親を指します。メンターは、同じような発達障害のある子どもをもつ親に対して、共感的なサポートを行い、地域資源についての情報を提供することができます。高い共感性に基づくメンターによる支援は、専門家による支援とは違った効果があることが指摘され、厚生労働省においても有効な家族支援システムとして推奨されています。現在ペアレント・メンター活動は、全国の自治体に広がるとともに発達障害だけでなく他障害にも広がりを見せています。
(特定非営利活動法人 日本ペアレント・メンター研究会より抜粋)
ペアレント・メンター以外に、チャビ母さんのように地域に参加することで同じ悩みをもつお母さんと繋がったことが、不安の解消へと繋がったとのこと。
保育園で同じ悩みを持つ仲間と知り合い、一緒に学び合い、どう息子と向き合えばいいかの方法も手に入れて、自分への不安が消えていった。そこで初めて私は息子にちゃんと向き合えるようになったんだと思う。
サポートする側という近いようで反対にいるからこそ、同じ悩みを持ち、同じ道を歩んできた親と繋がることはとても重要なことのように思います。
このように同じ状況で他の両親と会うことで、両親は自分自身とその子育てスキルに自信を得ることができると言われています。他の両親は、障害のある子供のニーズや他の子供のニーズを満たすことがいかに難しいかを認識しているからです。
そして、経験を共有して交流する機会があるときには、孤独であるという気持ちが軽減されます。また、共通の経験を共有することで、課題をより管理しやすくすることができるでしょう。
家族や友人のネットワークを維持することは、家族の力を促進させます。親は、自分の子供について何が良いのか、そして子供たちが何を達成したのかに焦点を当てることができるようになるでしょう。
こうした他の家族との繋がりをつくるために、家族は支援団体や家族会やコミュニティーがないか尋ねたりすると良いかもしれません。サービス提供者は、そうした情報を学び、いつでもコンタクトがとれるような情報を提供すると良いかもしれません。
<家族の強みとリソースに焦点を当てること>
特に家族中心サービスで重要なのが、家族の強みとリソースに焦点を当てることと言われています。
チャビ母さんの場合の強みとは「行動力」だと思いますが、言われる通り誰しもが「行動力」を持っているわけではなく、その「行動力」が前提に支援体制があることが、日本の支援体制にとって不十分なところかもしれません。
家族中心サービスではすべての家族が強みとリソースを持っているとされています。
しかし、それを家族が認識しているわけではありません。そのため、家族の強みとリソースがあると仮定し、特定していくことが重要と述べられています。そしてそれは、家族とサービス提供者の間での議論によって特定できると言われています(McCubbin&McCubbin,1993、Saleebey,1992)。
そのために、サービス提供者は家族に何が強みなのかを尋ねること(すべての家族が強みと資源を持っていることを知らせ、両親に自分の資源について考えるよう求めることも有用)、そして家族はサービス提供者に強みについてオープンな議論をすることを薦めています。
こういった機会を作り、その家族のもつ内的強さを一緒に考えながらみつけていくことが重要かもしれません。
家族の強みを特定する際に家族のスキルや興味をからみつけていくこともできます。職業的役割や、過去の経験、社会的な義務などから強みと資源を持っているかもしれません。そうした家族のもつ個人的スキルが、子育ての中でも十分に発揮され大事な能力であり、生活に反映されることを知っておくことは、障害受容が出来ていない時期こそ重要だと言われています。そして、困難な問題に挑戦するとき、親が親としての能力感を取り戻すことに繋がるともいわれています。
家族のもつ資源とは、祖父母や親戚など身内であったり、家族の友人や家族の関与、サポートなどのことを指します。
このような非公式の社会的支援は、子供の障害に関する親のストレスを軽減する上で非常に重要であるという報告もあります(King,1999)。
サービス提供者は家族の資源を特定するときには、家族の他の誰が子供を心配しているのか聞いてみると良いかもしれません。祖父母は何を考えている?家族のメンバーは、子供と家族の生活の中で何らかの役割を果たしているか?子供の世話に直接関与したい家族や友人はいるか?彼らは子供の状態について学び、彼らが何を手伝ってくれるかを学ぶために予定に出ることができるか?など、周りの人たちの理解や協力などの度合いを聞きながら、探っていくといいかもしれません。(但し、家族の同意がある場合のみ)
家族とのパートナーシップでも述べたように、家族の悩みや不安を理解するだけでなく、更に家族の強みとリソースに焦点を当てることが重要だと思います。家族の強みとリソースに焦点をあてることによって、家族の視点を再構築することで、親としての有能感を取り戻していくでしょう。
そしてこれらは、サービス提供者は、家族が親であるだけでなく、生活に多くの次元を持ち、多くの資質を持つ仲間であることを認識しようとすることの重要性も教えてくれます。
ただし、忘れてはならないのは、パートナーシップをもった仲間である前に、子どもたちの親であることです。家族中心のサービス提供者は、子どもの親としての役割をサポートしていくことを忘れないようにしましょう。
今回、チャビ母さんのnoteを引用させて頂きありがとうございました。少しでも、このような思いがなくなるように、見直していけたらと思います。