家族中心サービスの成功の鍵はコミュニケーション。家族からの意見や要望から解決策を探る方法。
サービス提供をしている中で、サービス提供に関して家族とサービス提供者との意見の相違が生まれる場合はよく見られます。
サービス提供者側は、預かっている側だからこそリスクに注意し、サービス提供できることを心がけます。1対1ではなく複数の方を同時に見ているため、出来ることと出来ないことを判断しながら最大限のサービスを提供しています。
しかし、家族がそのサービス提供に対し満足度を得れない場合、こうして欲しいといった意見を言われることもあります。
その意見に対し、サービス提供者側はネガティブな印象をもつことが多く、そこから意見の相違は生まれ、お互いに気持ちが離れやすくなるといった悪循環に陥ることもあります。
こういったシーンはおそらくどの事業所でも起きていると思いますが、何が問題なんでしょうか?
サービス提供者側の出来ることと出来ないことを判断しながら最大限のサービス提供を行うことも、家族の要望や意見を言うこともどちらも問題ではないと思います。
<問題は対立構造にある>
リスクが非常に高い状態でサービス提供を行っても命の危機に関わることも多いため、線引きをすることも大切です。
また家族が意見や要望を伝えなければ、サービスの質は上がりませんし、それこそ家族中心サービスではなくなります。
何が問題かというと、この対立構造になっているところが一つ問題であるということです。
<対立構造から抜け出す一歩目>
ここで思い出して欲しいのが
この記事で書いた、家族中心サービスの前提にあるものです。
<第1前提(基本仮定)>
・親は自分の子供を最もよく知り、子供のために最高のものを求めている。
この思いがあることを忘れず、どのような思いがあるのかを傾聴し、その思いを尊重することが重要です。
この傾聴・尊重する姿勢があれば、対立構造からの抜け出す一歩になると思います。
出来る出来ないですぐ判断するのではなく、家族は何を大事にしたいのかという本質的な部分を確認していくことが大事ではないでしょうか。
方法や手段ではなく、意図や目的を明確にし共有することがまずはじめに大事になってきます。この段階でその意図や目的が現実的に達成できるかどうかは関係ないです。
<家族が最終意思決定が行えるよう情報を提供する>
最終意思決定を行うのが家族であるべきです。サービス提供者や事業所がするものではないということも重要です。
ご家族の意図や目的が明確になれば、ご家族が意思決定を行うのに必要な適切な情報を伝えていきます。
子どもがどのような状態にあるのか、どのようなリスク管理が必要か、その場合どのような環境が必要かなど、専門職として正確な情報を客観的に今の現状を伝えることが大事です。
この流れを踏まえていくことで、出来ることと出来ないことがより明確になったり、意図や目的が現実的に達成できるのかどうかが理解しやすくなります。そしてどのような手段・方法を用いれば出来るのかというアイディアを出し合う流れになると思います。
そうした様々な情報を提供しながら、家族が意思決定できるようサポートすることが家族中心サービスのなかでも重要になってきます。
<家族中心サービスの成功の鍵はコミュニケーション>
効果的なコミュニケーションは肯定的な関係をサポートするが、コミュニケーションが悪いと、家族とサービス提供者の間のパートナーシップが容易に解明される。
このように、コミュニケーションで良くも悪くも変わってしまいます。
そして、今回のような意見の相違が生まれる背景には
定期的なコミュニケーションがとれていない
という問題も潜んでいたかもしれません。
コミュニケーションは環境の設定も重要になってきます。定期的にコミュニケーションがとれる環境の設定を事業所で見直すということも必要になってくるかもしれません。
それでは、効果的なコミュニケーションをとるにはどうしたらいいのでしょうか。
効果的なコミュニケーションの4つの主要な原則(Grice、1975)
1.正確である:適切な量の情報を使用し、少なすぎても多すぎてもいけない。
2.真実である:故意に聞き手を迷わせない。
3.関連性がある:以前のコメントに関連する会話に貢献する。
4.直接的である:明確に話し、あいまいにならないようにする。
この4原則を意識してみることも大事です。
また家族中心サービスにおける効果的なコミュニケーションをとるには以下のことを気を付けるといいと思います。
コミュニケーションの原則①
・平等にコミュニケーションをとる(Brandt、1993)
効果的なコミュニケーションの特徴①
・オープンな議論を奨励する。
・みんなにアイデアや意見を共有する機会を与える。
・サービス提供者と親は、コミュニケーションの役割において平等に交代する。
・相手が提示したアイデアを判断したり評価を下げたりしない。
コミュニケーションの原則②
・情報を共有するために明確にコミュニケーションをとる(Brandt、1993)
効果的なコミュニケーションの特徴②
・サービス提供者の貢献を明確かつ簡潔にする。
・理解できる言語を使用する。珍しい言葉やフレーズを避けて説明する。
・サービス提供者:子供の状態に関する情報と、明確でわかりやすいサービスオプションについての情報を共有する。
・サービス提供者:家族の気持ちを認め、話す。
・親:子供に関する情報を共有する。
・親:家族の強みとニーズについて話す。
コミュニケーションの原則③
・本当にお互いに耳を傾ける(Dunst、Trivette&Johanson、1994)
効果的なコミュニケーションの特徴②
・サービス提供者:家族に注意を払い、共感しながら耳を傾ける(アイコンタクトをとり、ゆったりとしたやり方で)。
・サービス提供者:親のメッセージを言い換えて、あなたが話したことを理解していることを伝える。問題を明らかにする。
・親:礼儀正しく聞く。
・親:理解していないときに質問する。情報が不完全なときにサービス提供者に知らせる。
コミュニケーションの原則④
・親は子どもについて情報に基づいた決定を下すことができる(Dunst、Trivette&Johanson、1994)
効果的なコミュニケーションの特徴④
・親:あなたの希望をはっきりと述べる。
・サービス提供者:家族が自分のニーズについて話すことを支援する。
・サービス提供者:家族が自分のニーズを識別するための戦略を立てる(例えば、アンケートを完了し、決定の肯定的/否定的結果を書くなど)。
・サービス提供者:両親を信じ、その決定を支援する。
これらのことを意識しながら、サービス提供者はコミュニケーションスキルを高めることが必要です。
今日現場からサポート要請が入って、こういった対立構造にあっている場面に遭遇しましたが、今回のことを意識しながらすることで特に問題もなく解決しお互いがハッピーになって終わりました。
ご家族からの意見や要望は、批判や非難ではなく思いからくるものを忘れず傾聴することから始めていくと良いと思います。
今回も目を通して頂きありがとうございました。