味のわかる人になろう、と思ったあの時
特にやりたいこともなかった私は、母がテニスをしていた、というだけの理由で、高校ではテニス部に入部した。それなりに頑張って、それなりに青春だった気がする。
海浜地区の学校だったこともあって、テニスコートが使えない時に、ラケット持って、声出ししながら海まで、列を組んで走る時間が、好きだった。
走った後の海辺の休憩時間は、あっという間のつかの間だったけど、その時が一番、好きだったのかもしれない。
運動するとお腹が減るので、あまり大っぴらにできない校風だったが、こっそり、ささやかな買い食いも、楽しかった。
冬は、スーパーの前のたい焼き、だったかな。
餡にするか、チーズにするか、中身の選択は、いつも悩ましいものだった。
そんな部活のある日、終わってからの空腹に、
お昼のおにぎりの残りを食べようと、広げた。
すぐそばで「あなか、空いた」という友人に
「半分、あげるよ」
と、食べかけていたおにぎりを半分渡した。
嬉しそうに一口、食べた途端に、友人は吐き出した。
「これ、腐ってるよ!」
一口目を頬張っていた私は、慌てて吐き出した。
確かに、いつもより触感が違っていた。
しかし、腐っていたとは、気づかなかった。
腐ったおにぎりの味...。
知らなかった。
いつもと違う味、と思って、食べてしまうところだった。
すごいタイミングで、救ってくれた友人に感謝である。
味のわかる人になりたい
その時、そう思った私。
味のわかる人になれたのかな?
少なくとも、腐ったご飯に気づかずに
口にすることは、なくなった。
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