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「昔話法廷」を読んで考えた”罪”への考えと話し合いの重要さ
NHKのEテレで放送されている「昔話法廷」の書籍を読んでみた。
前に映像で見ていたが、これがなかなか面白かった。今回は書籍版を読んでみての感想を書こうと思う。
概要
まず、「昔話法廷」を知らない方向けに簡単に概要を。
「浦島太郎」「ヘンゼルとグレーテル」「白雪姫」など、誰もが読んだことがあるだろうストーリーを、登場人物を被害者、加害者となり裁判を行う。その裁判の裁判員として毎回違う主人公が裁判に臨むという話である。
ある意味ネタバレになると思うが、これが重要なので先に書いておくと、この裁判には判決がない。裁判員となった複数人がそれぞれの判決とその理由を言って話が終わる。正解がない分、判決を想像してしまう。子ども向け教育番組らしい終わり方だな、とも思う。ちなみにテレビ番組では結構有名な方も出ることがあるのでその点も面白い。
感想①「正義」とは「悪」とは一体何だろうか…
それぞれの話でも、内容によって罪の大きさが違う。
「有罪」か「無罪」かを問うものもあれば、「死刑」か「死刑でない」かというかなり重いテーマも話し合っている。
一般的な昔話では、大体が「だれだれが××をしたから酷い目にあった」「〇〇をしていいことがあった」と、何かをしたからこうなった、ということしか書かれてない。
でも実際は?
酷いことをしたのはそれ以上に酷いことをされたからでは?
いいことがあったのは裏で良くないことをしたことによる恩恵では?
事実以外の、別の面があったのではないか。
人間は基本的に見えること、聞いたことでしか判断できない。見えない心の部分、考えや隠された事実を知らなければ、「善」も「悪」も判別できないのではないか、と考えさせられた。
感想②大人”だからこそ”読むべき作品
それぞれの裁判では、現代でも通じる隠された事実を明かされていく。
悪意のないつもりで言った被害者の言葉が、加害者にとっては屈辱的な内容だった。
被告に子どもができ、これからが怖くなった被害者が恋人を捨てて逃げようとした。
SNSで誹謗中傷を浴びたことにより被告が全ての人間へ強い怒りが沸いた。
現代の人間に当てはまる可能性がある事実が明かされ、一体誰が悪いのか、本当の悪とは何なのか、読み進めるたびに分からなくなっていく。
子ども向けの書籍と侮らず、大人”だからこそ”、考えさせられるなと感じた。
感想③大事なのは話し合うこと
私がこの話を読んでいく中で、一番大事だと感じたのは、判決について裁判員たちが全員で話し合う場面である。
私は子どものころはコミュニケーションが得意ではなく、学校の授業でもある話し合いというのはひどく苦手であった。しかし今にして思うと話し合いは重要だ。なぜなら自分にはない論点、想像すらしていない視点、感情、事実への解釈…話し合いの場はそれらを知る良い機会となる。
もちろん自分の意見が正しいこともある。しかし、新たな考えを知ることでより柔軟な発想を手に入れられる。自分の意見しかないというのは、いつまでたっても新しい考えは身につかない。話し合いが苦手でも、話し合いに加わる、話を聞いてみることの大切さをこの本を読んで改めて思い出させてくれた。
終わりに
ここまで読んでいただきありがとうございます。
色々と語ってきましたが、単純にストーリーも面白く、「昔話」というより、アレンジを加えた「新・昔話」を法廷で裁くというイメージでいいのかな感じました。懐かしさと同時に考えさせられる、良い作品でした。
初めて知った方も、昔読んだことがある・見たことがある方も改めて読んでみてはいかがでしょうか。
以上、まんまるでした。またいつか。