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今月読んだ本 『「世界征服」は可能か?』 岡田斗司夫



いや、ちょと待てと。
岡田斗司夫氏の別の本を探しに行ったのですが、ブッ◯オフの100円コーナーにこのような本を見つけてしまい、すぐ読みたくて即座にレジへ走りました。
まずこのトンデモなタイトルですよ(笑)
そして内容も、前半は ほぼ特撮やアニメに出てくる悪者のイジリ。
それも幅広い知識から導き出された理論でもって赤ちゃんのようにケラケラ笑いながら鋭く斬りまくる。
これぞまさに岡田節であります。
悪者たちのあまりの馬鹿馬鹿しさに、移動の電車内で何度も吹き出しそうになりました。
これが100円だなんて世の中どうかしてるぜって思うくらい、私は楽しませてもらいましたよ。いや、ホントに。





その馬鹿馬鹿しいとは何かって?
私も岡田氏に改めて指摘されるまでは、特におかしいとも思ってなかったことだらけでした。
例えば、『仮面ライダー』のショッカー。
ショッカー達にとって世界征服とは、何だったのか?
岡田氏のまとめによれば
①まず、改造人間をどんどん作る。
②作った改造人間で世界中を襲う。
③世界中の大統領や重要な人物たちと改造人間を入れ替える。
・・・でも、その後のことは言ってない。
入れ替わるのは分かったけど、改造人間を作る技術でお金を稼いで、米国の上院議員を買収したほうが手っ取り早くないか?・・・


そして、『北斗の拳』のサウザー。
サウザーは、どういうわけだか子供たちを使ってピラミッドを建てようとします。
・・・ん?子供を使うのは大人にやらせるよりも時間かかりませんか?同じ重さの石を運ぶのに人数も多く必要だし。となると、ロープや工具もそのぶん必要だし、宿泊所などの生活設備も手配が大変なのでは?・・・


岡田氏は言います。
「いったい、サウザーもショッカーも、ちゃんとマジメに「世界征服したい」と考えているのでしょうか?」



やめてあげてっ!!(T▽T)
頭の良い人が理路整然と正しいこと言うヤツやめてあげて!
彼らはあれでも本気で考えてるんだから!







しかし、そんないまいちビジョンの見えてこない非効率的な悪が多い中、「戦う前に勝つ」という意味で「ほぼ満点の出来」と岡田氏に言わしめた侵略作戦もあります。
それは『宇宙戦艦ヤマト』に登場するガミラス星人の作戦です。
ガミラス星は惑星としての寿命を迎えつつあり、全員で移住できる星を探していました。遊星爆弾という放射能を多量に含む隕石を地球にどんどん落として、地球を放射能で汚染し、そこに住む生き物を全滅させようと考えます。
ガミラス星人は放射能を含む大気しか呼吸できません。
攻撃に使う遊星爆弾の製造・発射基地も地球からはるか離れた冥王星にあるため、地球の攻撃も届かず、ガミラスは戦死者すらほとんど出さずに地球人を全滅寸前まで追い込んだのです。
「これまでの他の「人類滅亡」をスローガンにしている悪の帝国などとは比べものにならないほど論理的・知的な侵略作戦」だと評価しています。






こうやって冷静に分析されると、子供の頃はただただ胸を熱くしながら観ていたハラハラドキドキのアニメ・特撮の敵達にも、実は色んなタイプがいたんだなと改めて認識させられます。
岡田氏は、世界征服の目的を4つのタイプに分類しています。

その1「人類の絶滅」
先程のガミラス星人がこれに当たります。『勇者ライディーン』の妖魔帝国もこれ。

その2「お金が欲しい」
この手のタイプは、アニメやマンガに登場する「悪」の目的では、圧倒的多数をしめているそうです。007シリーズに登場する悪の秘密組織スペクターがこれに属します。

その3「支配されそうだから逆に支配する」
『機動戦士ガンダム』のジオン公国が典型例。ここまで単純に「悪」として括ってきましたが、ジオン公国の場合は「ザ・悪の組織」と言いきれない難しいところがありますね。

その4「悪を広める」
ご存知『ドラゴンボール』の、ピッコロ大魔王が代表例。そういえば、「戦争 暴力 強盗 殺人・・・なんでも自由だ!だれもとがめはせん」て言ってたわ。。。



面白いのは、『ドラゴンボール』の悪役は、世界征服したあとの目的がきちんと描かれていて、それぞれタイプが違うんだとか。それ、言われてみるまで全く気づいてなかった。
鳥山先生、流石です。
なんだかよく分からないまま とりあえず征服したがるキャラ、多いですからね(笑)






そして、支配者のタイプも4つに分類しています。
言い忘れていましたが、本書は、読者も世界征服願望を抱いているのを前提に話が進んでいきます(笑)
仮にその立場になった上で考えてみるのも、なかなか面白いものです。
あなたはどのタイプでしょうか?

A魔王 「正しい」価値観ですべてを支配したいタイプ。
B独裁者 責任感が強く、働き者・仕切り屋タイプ。
C王様 自分が大好きで、贅沢が大好きタイプ。
D黒幕 人目に触れず、悪の魅力に溺れたいタイプ。



Aの魔王型の典型的なタイプは『レインボーマン』の「死ね死ね団」。心の中に強烈な恨みや怒り、許せないという感情が爆発しています。



Bの独裁者型は、自分からどんどん働き、部下もしっかり働かせます。命令好きの命令上手。しかし、忙しいけれど他人に任せられない面を持っており、過労死するほど働かざるをえない人物でもあります。
『バビル2世』の敵、ヨミ様がまさにこのタイプで、トラブルが起こると「大変だ、寝ているヨミ様を起こせ!」と、すぐに部下に起こされてしまい、寝られないし疲れて老けていくし、結局は過労で死んでしまいます・・・可哀想。なのに笑っちゃう。
だって、「ヨミさま人生すごろく」なるものが掲載されてるんだもん。
ヨミ様の人生で遊ぶな(笑)



ちなみに私の好きな『DEATH NOTE』の夜神月もこのタイプだそうで、独裁者の忙しさと孤独が描かれています。
月がトラブって指示が出せないと、子分は良かれと思って自分なりに考えて間違ったことをする・・・そんなシーンありましたね。結局頼れるのは自分だけになっていきます。




C王様型。『天空の城ラピュタ』の将軍、『ドラゴンボール』のレッドリボン軍総帥がこのタイプです。おだてに弱く、支配者へのプレゼントとして美味しいものや珍しいもの、宝石など豪華なものや面白いものにも素直に喜ぶ。別名「バカ殿様型」だそうです。




D黒幕型は、目立つのは嫌いだけれど、物事を自分の思い通りに運ぶのは大好き。部下も武器も自分の道具と思っているので、失敗した部下に対する処罰も手厳しく、敵に部下が殺されても平然としています。
アニメ版『ルパン三世・カリオストロの城』のカリオストロ伯爵や、『ドラゴンボール』のフリーザ様がこのタイプ。




Dの黒幕型などは、流石にちょっと特殊かもしれませんね。ただ、こんなに極端に特徴が現れなくても、やや独裁者型や、やや王様型の傾向がある人ならば身近にいませんか?
最初は、おマヌケな悪役をのんきに笑っていたはずなのに、だんだん他人事ではなくなって、笑えなくなってくるんですよ。
本書の後半では、銀行強盗を成功させるためには、具体的にどれくらいの人件費がかかるものなのかを算出したり、実際に人々を支配した場合に起こりうるリスクも検討しています。
この本を読む前から支配者になりたいと内心思っていた人も、読みながら岡田氏に乗せられて支配者妄想に浸っていた人も、みんな萎えてきちゃうくらい冷静に分析されてます。
うわぁ、支配すんのって・・・骨が折れるなぁと。
「もうオイラ今のままで充分幸せです、満足します」と言いたいところですが、岡田氏はわりとしつこく「でも諦めちゃダメ」って説得してきます。




こんな風に引っ張る岡田氏こそ、一体何が狙いなのよ?と言いたくなりますね。
アホ話に食いついてヘラヘラしていた私も←(笑)いよいよ終盤に向かって岡田講義の真骨頂を見せつけられることになります。お菓子に釣られてフラフラついて行ったら急に宗教の布教アニメを見せられた子供ばりに感じるのです。

「大人 怖えぇ」と、、、(笑)

でも、そりゃそうですよね(^_^;)
「いい大人がバカ話するためだけに わざわざ ちくまから本出すわけないだろ。キャッキャッキャッ」という岡田氏の笑い声が聞こえてくるようです。本一冊出すのって大変ですからね。

さて、ここまでの章で世界征服をバーチャル体験してきましたが、最終章では「悪とはなにか」「支配とはなにか」「世界とはなにか」を論じる よりディープで本質的な章へ入っていくわけです。これまでの様々な事例を踏まえた上で、結局、世界征服は可能なのか?今の世の中で世界征服するとは何をすることになるのか?という話になっていきます。






どうですか?面白いでしょう!?
前半の悪者イジリだけで充分面白いのに、後半は別の意味で面白くなっていくんですよ。
それから、あえて触れなかったですが、架空の人物だけを取り上げてるんじゃなく、実在の人物も参考として沢山取り上げられてます。
だから、「世界征服」なんていう大風呂敷広げてますが、全然〝あっちの世界の話〟じゃないんですよ。
最初は架空の話と思って笑っていたのに、徐々に徐々にシリアスにならざるを得なくなっていくという構成も素晴らしいと思います。

自分の好きなアニメの話とか載ってないかなぁ?くらいの気持ちでパラパラめくってみても面白いんじゃないでしょうか。
『ふしぎの海のナディア』も『ヤッターマン』も『ジャイアントロボ』も出てくるよ〜。『オースティン・パワーズ』や『ターミネーター』もいるよ〜。なぜか『にこにこぷん』まで話題にあがるよ〜。
日本の三英傑や、旧ドイツ軍のあの人や、北朝鮮のあの人も出てくるよ〜。







あとがきで岡田氏はこんなことを話しています。


「なんでアニメやマンガの悪役の『世界征服』ってウソっぽいんだろう?」
「どうして離婚が増えて、結婚する人が減ってるんだろう?」
「私たちの世界は、これからどのように変わっていくんだろう?」
私はいつも、こんなことばかり考えています。大学生くらいの時にこういう悩みは卒業すべきなのに、いまだに考え続けています。
「世の中の人たちが忙しすぎて考える時間がなくなっちゃったので、代理で考えるのが自分の仕事なんだな」と考えているんですよね。


ああ、それならば助かる!岡田氏が良い人でよかったですよ。
「この頭脳を使って秘密結社を作るのだ」って言われたら困るけど、「この頭脳を使って秘密結社を作る妄想をどこまでもリアルにするのだ」ならばありがたいですよ!
だって面白いし(笑)

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