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私立小出身の母が映画『小学校~それは小さな社会~』を観て感じたこと



映画を知ったきっかけ

Instagramを開いていたら、前々から行きたいなぁと思っていた飲食店の店主がとある映画を応援している! という内容の投稿をしていました。

そもそも行ってみたいだけで、まだ行ったことのないお店だし、店主がどんな人なのかも知らないけれど、ちょっと気になる映画だなぁ……と。思いました

こういうひょんなきっかけで出会った本や映画や美術展にふれてみたら、ものすごい学びになった、みたいなことが過去に何回かあり、2時間半ほど長女を預けて映画館へと行ったのでした。

映画はこちら↓



なぜアンテナが立ったか

家庭の方針により、東京都内の私立小学校へ通っていたわたしにとって、公立小学校というのは未知の世界でした。

子どもの頃には、服もランドセルも好きなものを選べていいなぁとか、自宅近くの公園に行くと、小学校の友だち同士で仲良く遊んでいていいなぁ(わたしは1時間以上かけて通っていたので近所に友だちがいなかった)などと目に見える部分だけをうらやましく思っていたのでした。

大人になってからは、バックグラウンドが多様なメンバーと学び合う機会を逃したなぁとか、でも当時教わっていた先生方がほとんど母校に残っているので会おうと思えば会えるのはいいよなぁ(未だに連絡を取っている)などと良い面・悪い面をそれぞれ捉えるようにはなりましたが、公立小学校の実態はよくわからぬまま。

一見、地域に開いていそうでも、夏祭りなどのイベントで敷地内に入ることがあるだけで、ボランティア活動等に関与していない外部の人間が立ち入り、日々の学校生活をくわしく見るなどということはできません(この点、私立小はホームページの説明が充実していたり、決まった日になるものの、1日ガッツリ見学ができたりするのです)。

そんなわけで、この映画を見れば1つの学校の事例かもしれないけれど、ある程度は公立小学校の実態が分かるのでは? と思ったのでした。

長男はおそらく地元の公立小へ通うので、長男のためにも公立小のことを知っておきたいという思いもありました。


映画の感想
※一部、映画の内容にふれています

簡単にひと言で言い表せるものではないのですが、大きく3つあります。

①公立小の(特にコロナ禍での)学校生活の様子がとてもよくわかった

②子どもたちを「日本人」にしていく日常のささやかな指導になるほどーと思うとともに違和感も覚えた

とは言え、先生もまったく考えていないわけではなく、葛藤しながら子どもと向き合っているのが伝わってきたけれど……


1つずつ説明します。

①公立小の(特にコロナ禍での)学校生活の様子がとてもよくわかった
映画では数名の小1と小6、そして先生にフォーカスしつつ、学校の1日をとても丁寧に1年間追っていきます。

塚戸小学校独自の取り組みもあるのかもしれませんが、公立小学校での生活の様子が、コロナ禍での分散登校やタブレット端末を使った授業の様子も含めて、よくわかりました。

個人的には消毒液の配布・管理する係(説明はありませんでしたが、きっとコロナ禍で生まれたであろう係)があったこと、廊下の手洗い場の石鹸の補充やホームルームの教室以外の掃除まで子どもたちがやっていることに驚きました。

②子どもたちを「日本人」にしていく日常のささやかな指導になるほどーと思うとともに違和感も覚えた

この映画のテーマでもあるのですが、映画の中では上履きを脱ぐ時にはきれいに揃える、挙手する際には耳が腕につくようにまっすぐ挙げる、名前を呼ばれた時は大きな声ではっきりと返事をする等を指導する場面が出てきます。

日常生活における日本人の美の感覚がこうした指導を通じて養われているのでしょうけれど、令和の時代にそこまでするんだ……という驚きが終始ありました。

わたしの出身校では靴を揃えることに関して何回か指導はあったと思いますが、あまりうるさく言われなかったように記憶しています(映画の切り取り方のせいかもしれませんが……)。

下校した1年生の靴箱に収められた上履きの揃え方を6年生が評価する場面も出てきて、評価付けまでやるのか……靴を入れた本人がどう思うか(美しくない・美しくありたいと感じれば直せばいいし、何も感じなければそのままにする)が大事なのでは? と違和感を抱きました。
この映画でいちばんモヤモヤしたポイントかもしれません。


とは言え、先生もまったく考えていないわけではなく、葛藤しながら子どもと向き合っているのが伝わってきたけれど……

映画からはこうした周囲からの評価も含む指導全般について、先生方それぞれに葛藤しながら行なっていることも伝わってきました。

勉強会のような場では國學院大學の先生が講義をする場面が出てきます。

國學院大學はルールに従っている人がそこからはみ出た人を徹底的に叩くネット上のあるあるに触れ、学校教育の現場ではそういう大人を沢山生み出してしまっている反省が必要ということについて触れていました。

時代に合わせて変えていくべき指導と変えずにそのままいくべき指導との狭間で先生方が悩む様子、先生同士で議論する場面もちょこちょこ出てきます。

考えナシに昔からある(と思われる)指導を継承しているのではなさそうでよかったと思った反面、映画に出てきた先生方がそうなのであって、何の葛藤もなく指導にあたっているような先生もきっといるだろうな……ああいう類の指導が合わず苦しい思いをする子どももきっといるだろうな……という不安も残りました。

不安は残ったのですが、授業に、日常生活の見守りに、行事に、勉強会に、コロナ禍ではドアノブの消毒まで……(映画には出てこなかったことも含め)やることに追われている先生方なので、外注できることは外注するなどして仕事の総力を減らさないと、こうした指導について先生方がじっくり考える時間を確保するのも難しいだろうな……と感じました。

(まだ辺りが暗~いうちに先生が出勤する場面が何度か出てきて、ひぇー! となりました)


おしまい。


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宮沢早紀
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