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地方大学は生き残れるか:デジタルディバイド③

 前2記事において、大学教員・学生個人に関するICTやる気スイッチと、高校以前のICT教育の欠如について指摘した。最後に、大学間におけるデジタルディバイドが、少子化となるこれからの大学教育においてどのような影響を及ぼすかについて考察したいと思う。(小野堅太郎)

 都市部の有名大学がこぞってオンライン講義を今後も継続すると発表している。対面授業がないのであれば、わざわざ家賃の高い都市部に住む必要はなくなるだろう。家族もおり、高校までの友人たちのいる地方での生活を継続する大学生も増えてくると思われる。就職にしても、大企業の一部は在宅勤務を取り入れてきて、必ずしも本社のある都市部に住む必要がなくなってくるだろう。既に多くの人たちが、オンライン会議にも慣れてきていて、出張などもかなり減ってくるようなると思われる。人の流通が減少し、地方にも人が留まる時代がやってくるように思う。

 そう想像したとき、地方大学の役割は何なのかを考えてみる。

 そもそも大学とは、研究機関であり、より高度な学問を習得するために学生への高等教育を行う場である。さらに、研究者の養成として大学院を持つ。大学もしくは大学院にて得た知識や技術をもって、社会に利益を還元するために大学は存在する(と、思っている)。九州歯科大学としての役割は、歯科医師・歯科衛生士の国家試験合格のみならず、優秀な歯科医療人として社会に送り出すことである。

 では、なぜ北九州市小倉北区なのか。先の役割を担う大学は、別に地方に限定される必要性はない。そこで、大学の独自性が求められるようになってきた。九州歯科大学は全国唯一の公立大学法人であり、福岡県に属する。なので、福岡県民の歯科医療を支える・・・ん?福岡県には九大歯学部と福岡歯科大学があるな。・・・うーん、なので、北九州市近隣の歯科医療を支える基幹病院・学術拠点として活躍する必要がある!

 昔、地域活性化に大学は必要なものであった。九州歯科大学は長らく、九州、広くは西日本唯一の歯科医師養成校であり、福岡の中心地に存在した。財政難に陥った学校を小倉市(現小倉北区)が救済し、福岡市から大学を移転させたという経緯がある。九州歯科大学はその後の北九州の発展に寄与したわけです。情報革命が起きた今、地方大学の役割は宙に浮いてしまっているというのが実際のところです。

 大学人は、研究をするために大学の研究施設を使う必要がある。臨床医なら病院での勤務がある。よって、大学近隣に居を構える。オンライン講義と言っても、職場にある様々な資料がコンテンツ作成には必要なので、大学への通勤がなくなることはない。しかし、学びの場である大学は情報の発信基地ではあるものの、学ぶ学生が近隣にいないことになる(大学の種類により程度の差はあるが)。そうすると、大学が存在することで得られる学生からの経済効果は、地方において著しく低下する。逆に、他大学の大学生が留まってくれているので、地方自治体としては経済面では相殺されることになる。マイナス部分を削ればプラスだけ残るので、地方大学は生き残り戦略が必要となる。

 学生を大学に来させるために対面式の授業、実習を多く取り入れるようにすると、登校中止が繰り返されれば運用できず、学生は払った学費分の教育を受けられなくなる。そのリスクを避けて、オンライン講義をメインにすると、地方大学の経済的存在価値が薄れてしまう。オンライン講義の質が低ければ、そもそも学生が集まらない。YouTubeで質の高い教育コンテンツが次々に無料で公開される中、大学教育の独自性はより一層求められる。少子化は、真綿で首を絞められるように徐々に大学存続を危うくさせている。地方大学は選択を誤ると、容易に定員割れをして廃校となっていくだろう。

 マナビ研究室は何とかYouTube、note、TwitterといったSNSを使用して、九州歯科大学の存続にも役に立てないかと考えています。今はまだ始まったばかりで何の力もありませんが、10年も続ければ何かできないかと考えています。

 九州歯科大学は、これまで何度も廃校の危機を脱している。すべて卒業生(同窓会)の援助にて、ギリギリで生き残っている歴史がある。卒業生の皆さん、九州歯科大学を今後もお守りください。


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マナビ研究室
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