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【Λ世界線記6】プレシア内戦に巻き込まれた後輩 by鍵浦政樹
最近、僕の同僚であり後輩である真名方涼が忙しそうにしている。
涼の本来の研究対象は人々の世界観・宗教観だが、最近はプレシアについての研究にも結構取り組んでいるようだ。
プレシアは東欧にある多民族国家であり、長きに渡る根深い民族間対立が再燃して2020年以来内戦が続いている。
彼はプレシアでの研究調査中にその内戦に巻き込まれた。
それどころかあのテオドーロ・ブレーデンと行動を共にしていたらしい。ただ、そのことについてあまり多くのことを語ろうとはしないがね。
彼がプレシアの内戦に巻き込まれて行方不明・安否不明になっているとの報せを聞いたときは焦ったさ。
彼のことは国内でも報道されていた。「新楼大学の若手研究者がプレシアで行方不明になっている」と。
何ヶ月か後、彼が隣国のローゼンシアへ脱出して日本大使館に現れたという速報を聞いたときには胸をなでおろした。
しかし、大使館で彼が保護されたときの映像が各局のニュースで何日も流れたもんだから、すっかり有名人になってしまった。
プレシアの内戦はまだ続いていて、内戦に関する悲劇的なニュースが毎日のように報じられている。
そのたびに涼は、プレシア関連の有識者として報道番組に呼ばれたり、取材を受けたりしている。
彼も彼で、そういうオファーの全てに応えようとしている。
プレシアでの惨劇を体験した当事者として、あの国で起きていることを伝えるという責任を感じているんじゃないかな。