人生の終焉をどう迎えるかは、私たち一人ひとりの自分自身との向き合い方によるのだ。
私たちの人生は、自分では予期せぬ形で始まる。なにせ、自意識がない状態で生まれ落ち、何も意識しないで生きることがスタートし、ある一定の時期まで、自分自身を振り返ることはない。しかし、15年も生きていれば、違和感が生まれ、自意識が働き、私たちは自分の人生を疑い始める。これが、第2の人生の始まりだ。ここからは自意識とともに生きていくことになる。
この第2の人生が始まってから、苦悩が生まれる。例えば、人間関係に苦しみ、自分の思い通りにはいかなくなり、そして、他人との心理的軋轢に辟易し、それでも、自分が背負った責任を全うしようともがく。
第2の人生が始まって4、50年経つ頃、やっとそういう苦悩から解放されることになる。それが、自分の人生に対する諦観からなのかどうかはわからないが、若い頃よりは、悩む度合いが少なくなって、私たちは人生の終焉を迎える。
しかし、その終焉に際して、最後の苦悩が待っているのだ。それが、死という未経験の事態に対する不安だ。この不安にどう対処するかは、それまでの生き方が決定する。全員が必ず死ぬことだけは間違いない中、人生の終焉をどう迎えるかは、私たち一人ひとりの自分自身との向き合い方によるのだ。