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原稿への赤字が怖いあなたへ「次に生かすポイントの見極め方」
Twitterで出会った編集人材とのやり取りから生まれた企画をnoteに掲載する往復書簡シリーズ。前回取り上げた以下の記事の反響が大きく驚いています。ありがとうございます!
「このライターへの依頼もうやめよう。。」クライアントが思うとき|まむし|note
前回は「継続依頼されにくいライターの特徴」を考察しましたが、「クライアント側だって大概だろう」ということで、今回は「クライアント側」に関するテーマでお金ライターの三浦さんとのやりとりで生まれたネタをご案内します。
今回のテーマ
原稿に対するクライアントからの赤字、どこまで真に受けるべきか
今回もありがとうございます。
むしろ僕はクライアント側に立つことが多いので、こちらを自己反省する方がスタンスには合っているかもしれませんw
自社の編集メンバーを横で見ていても「それは言い過ぎなんじゃないか」とか「このフィードバック、言葉はきついけど、ライターさんがあんまり重く受け止めないといいな」と思うことが多々あるので、今日はこの場を借りてその思いを明文化してみたいと思います。
赤字にも「濃淡」がある
クライアントから返ってきた原稿にびっしりと赤字があったらーーー。
すみません急に。これだけで「おえぇっ」というライターさん、多いのではないでしょうか。お気を確かに。
かくいう僕も、1人のライターとして外部に記事を書くときは、クライアントから返ってきたワードを開く瞬間が本当にドキドキで、開いた瞬間真っ赤に染まったワードファイルを目にすると、強烈な悪寒が走ります。。(苦笑)
ただ、赤字を入れている編集側の意見を代弁して言いたいのは、「赤字にも“濃淡“があるということ」です。
要するに「二度と繰り返さないように意識してほしいと思う赤字」と、「そこまで気に留めないでほしい赤字」があるというか。本来は編集者の側が校正機能のコメント欄やメールなり電話なりで補足してすり合わせるのが大事…ですがその言語化が上手でない編集者も多いので、ここで簡単に僕なりの「赤字」の分類術をご紹介したいと思います。
編集者が入れる「赤字」の4類型
まず前提としてなのですが、同じ赤字でも、その背景にある意図は大きく4つに分類されます。
図で表すと以下みたいなイメージで、縦軸はその編集部固有のものか、普遍的なものか。横軸はその指摘が客観的なものか、編集者の主観的なものか。一つずつ解説していきます。赤みが強いほど、「今後要注意!」というイメージです。
![](https://assets.st-note.com/img/1675487909791-7Em52h0AJW.png?width=1200)
①一番やってはいけない間違え「事実誤認」
まずは右上の「普遍的であり客観的な指標に基づいた赤字」について。ここにプロットされる要修正事項のことを、本記事では「事実誤認」と名付けさせていただきました。
・事実関係の相違
・固有名詞の間違え
・資料内容との相違
・文法上のミス
などがプロットされるこの象限ですが、こここそ、「ライターさんに最も注意してほしい赤字」になります。
僕が記者をしていた頃も「最もやってはいけないこと」として人名や事実そのものに対する間違えが筆頭に挙げられており、ここを間違えたら媒体のどこかで「お詫びと訂正」を求められるほど信頼を落とすことになるので、編集者としては細心の注意を払っています。
もし、執筆された記事で事実関係そのものを間違えていたり、誤解を招くようなニュアンスになってしまった場合は、再発防止に努めていただけると良いかと思いますし、以後同じミスが繰り返されないような策を自発的に提示できると、クライアント側は安心するかと思います。
②媒体固有のルールは、「事前共有を受けているかどうか
次にその下、「客観的であり、編集部独自のルールに基づくもの」。このゾーンに入る要修正事項は、「媒体ルールからの乖離」とでもしておきましょう。
ここにプロットされるのは、
・媒体のビジョンに沿っていないもの
・媒体固有の表記ルールに反するもの
・媒体読者の特性により承服できないもの
など。「その媒体固有の”明文化された”ルール」からそれてしまっているケースです。
この部分に対してどこまで重く受け止めるべきかは、「編集者から事前にどの程度の共有を受けていたかどうか」によります。
事前に共有を受けていれば「確認不足ですいません」という話ですし、逆に共有を受けていないのであれば、その責は僕は編集者側にあると考えています(いろんな見方はあると思いますが)。
ただ、責任割合を議論しても何も生まれませんし、回を重ねていけばこのへんは身につくところですので、あまり気に留めず「なるほどなるほど。さあ、次!」と気分を変えてもらえるといいのかなとも思ったりはします。
③「答えは読者」編集者がうまく言語化できない赤字も
さて、ここからが難しいのですが左上。
「普遍的だけども、主観的な内容」について。ここの答えは正直、答えが読者の中にあるゾーン。時には「要協議」でもあり、ライターと編集者が二人三脚するか、喧嘩をするかが分かれるポイントとなります。
・「こっちの方が読みやすいんじゃないか」
・「こういう物言いをした方が通じやすいんじゃないか」
といった指摘がここにプロットされます。
よく編集者からの修正履歴に「わかりにくいような」とか、「こっちの方がいいかも」とか、「もうちょい具体的な対案出せよ」と言いたくなるようなファジーな指摘が返ってきて発狂しそうになる経験ないでしょうか。それです。
このラインが一番受け取り方が難しいと思っており、答えを持っているのは「読者」であるが故に編集者の側も、うまく修正意図を伝えられないことが往々にあります。
ケースバイケースなので難しいところですが、だからこそ逆にいうと、ポイントは「編集者側も答えを持っていない」というところ。もし編集者の修正意図が理に適っていないと思ったらライターから代替案を提案しても良いでしょうし、クライアント側がどういうニュアンスを伝えたいと思っているのかを聞き直しても良いかもしれません。とはいえ時間は有限ですから、ご自身としてこだわりがなさそうであれば、実務上は編集部側の意向を飲み込んで次に移るというのも、あり得るかとは思います。
いずれにせよ、編集者自身も答えを持っていないような修正を、あまり引きずって欲しくないですし、むしろここは二人三脚の余地だと思い、限られて時間の中でもスマートに協議できると良いかなと思います。
④「趣味だろおい」という指摘、スルーしておk
最後に、左下。「媒体固有的で、かつ主観的な内容」について。端的というと「編集者の趣味」です。「いやあんた(編集者)の好みでしょw」というケース、というか。
3つ目との違いが分かりづらいですが、「意味は変わらないのにやたらこの言葉使いたがるな」とか、「もはやこの人の原稿になってるな」とか、そういうやつを僕は「編集者の趣味」と評しています。ライター出身の編集者だととくに、人の原稿を自分の原稿と同じレベルで直して原稿を真っ赤に染め上げることが多々あり、「あー趣味だなこれ」と横で見ながら感じることもあります。
ここに関してはいろいろな見方があると思うのですが、個人的には編集者側に問題があるんじゃないかと思ったりします。本来、ライターのやる気を引き出したり、二人三脚でより良いものを作るのが編集者の立派な仕事。コンテンツの本質的な価値には関わらないような細部の細部まで手を入れて、「やれやれ」みたいなマウントを取る編集者を見かけるたび、「自分の好みでライターさんのモチベーション挫いちゃダメでしょ」と伝えることも。読者からの印象、結果として対して変わんねえじゃん」とご自身で思われるような赤字は、気に留めなくてもいいんじゃないかなというのが僕の見立てです。
正直クライアントの中には編集者としての経験がほとんどない人もいるケースがあり、ライターの方が文章に対する専門性を持っていることすらあります。
あまりに好みと思えるようなゾーンでのすれ違いが多い場合は「相性の問題」と割り切ってしまうのもありですし、主観が過ぎる修正が多い場合は距離を置くのも一手ではないかなと思ったりもします。署名記事の場合は、あまりに承服しがたければ署名を外してもらうといった判断もあり得るかと思います。
##「赤字をする・される関係」に、上下はない
冒頭にも記しましたが、赤字を受けるって本当にストレスフルですよね。
「直す・直される」という関係性になると、どうしても「直す側」が偉いような図式になってしまいがちですが、いつも人の原稿を直しながら「やれやれ顔」してる社内編集者には「人の原稿だから気付けてるっていうだけじゃないっすか?wwww」と冷や水をぶっかけるようにしています。実際、そうなので。
特にメディアというのは、作り手のモチベーションがダイレクトに製作物に響くという特性もあるので、「基本のき」みたいな間違え以外は、あまり気にせず次に行ってほしいと思うのが個人的な所感です。編集部から返ってきた赤字に対しても、「読者から見た価値」という視点で咀嚼して、次に生かせてもらえれば、それで十分。媒体にとっても編集者から見ても、ライターのモチベーション下げることこそ一番のリスクだったりしますから。編集部の顔を伺うのではなく、ライターが読者の方を向いて前向きに記事を書ける状態をつくれるのが、優秀な編集者だと僕は思います。