“Brother”と兄弟への赦し――「ライオン・キング:ムファサ」感想
心待にしていた作品でしたので、先行上映で観てきました。
「ライオンキング」の主人公シンバの父でありプライドランドの王ムファサと後にヴィランとなるスカーの前日譚。
以下ネタバレ含みます。
超実写の前作ではスカーはムファサを「兄上(big brother)」と呼んでいたのですが、予告編を観る限りタカ(後にスカーと呼ばれる)がムファサのことを「兄」と呼ばないことが気になっていました。
本作では孤児のムファサと王子のタカには血の繋がりがなかったことが明かされます。しかし、固い絆で結ばれた二匹はお互いをずっと「兄弟(brother)」と呼びあっています。
そして、ラフィキもまた旅を通じて苦楽を共にしてきたムファサを「兄弟(brother)」と呼びます。
本作をみると、「兄弟(brother)」というのは血統的な意味をもって使われているのではなく、アフリカ系の人達が同士に親しく呼び掛けるような意で使われていることに気がつきます。
種族や血の繋がりは関係ない、絆で結ばれた者同士もまた「兄弟(brother)」であるという本作メッセージは「誰もがサークル・オブ・ライフの一部である」という考え方と美しく響き合っていました。
前作を監督したジョン・ファヴローは「この映画のテーマはサークル・オブ・ライフ、命のつながり。誰もがこの世界に生きる誰かを支えている。だからこそ、この世に生きる意味がない人なんていない」という言葉を残しています。
本作では前作のメッセージを引き継ぎつつも「兄弟(Brother)」という言葉によって「生きる誰しもが繋がりや絆をもつ。姿や形は関係ない」というメッセージが「サークル・オブ・ライフ」に加えられました。これにより、映画史に残る哲学がよりリアルに、そしてより深いものへと変わったように感じられました。
ところで、本作のもう一匹の主人公、ムファサの孫のキアラは祖父の物語と語り部であるラフィキから、「愛されない苦しみから、他者を憎んでしまうことがある」ということを知ります。
アニメーション「ライオン・キング2」では、シンバはプライドランドを乗っ取ろうとするスカーの妻ジラと対立するのですが、ジラの養子であるコブと恋に落ちたキアラは同じライオン同士憎み争うのではなく、互いに赦し合い共存する道を選びます。
超実写の世界では「ライオン・キング2」とどのように物語が繋がるのかはわかりませんが……キアラの中にはラフィキとムファサの物語から学んだことが心に残っていたのかな、なんて想像しました。
またキアラとコブを出会わせるというアイデアは天から総てを見守るムファサによるもの。
物語の最後にスカーの家族たちはシンバの治めるプライドランドに迎え入れられます。そして、その様子を見守るムファサはシンバに「よくやった、息子よ。我らはひとつだ」と言います。
この言葉に触れたとき、私はスカーはやはり兄弟であってムファサは赦したかったのだろうなと感じたのです。
超実写の本作ではムファサは裏切り者のタカに厳しく当たります。(無垢なムファサはタカが自分を裏切ったことよりも、罪のない多くの動物たちの命をも危険に晒したことへの怒りが強かったのかなと思いましたが……。)
しかし、キアラの物語(「ライオン・キング2」)へと続いていくのなら、スカーとタカはちゃんと「兄弟」として和解することができる日がくるのでしょう。
「ライオン・キング2」とキアラがディズニーヒロインのなかでもトップ3に入るくらい好きなキャラクターなので、本作に登場してくれてすごく嬉しかったです。(だから、ついつい熱く「ライオン・キング2」について語ってしまいました。)
ラフィキにぎゅっと抱き締められるキアラすごくかわいかったなぁ……。
期待していたグッズは全く出てなくて悲しいけど……。