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20代で学ぶべきは「ズル休み力」

どうしても起きられない。力が湧いてこない。
そんな朝を迎えた経験はあるだろうか。

今日は、こんなときの過ごし方について提案したい。





上司の突然の休暇

サービスローンチが間近に迫っていた。まだわたしが20代のころの話だ。

まったく新しいサービスだったので、大混乱を極めた。毎朝、進捗確認の会議をして、今日のタスクの一つでも欠けたら間に合わなくなる、という切羽詰まった状況が1か月続いていた。

ある朝、会議室でまさにこの進捗確認会議の開始時間を待っているとき、全員のメール受信音が鳴った。送信主は上司である。


「今日は体調が悪いので休みます。」


なぬーーーー!?!?


親愛すべきこの上司を、わたしたちはつーさんと呼んでいた。つーさんは、note公式さんにも取り上げていただいた以下の記事の上司だ。




このとき、企画のキモはつーさんが握っていた。わたしたちはすべてつーさんの目を通すし、上の人間もつーさんへ指示し、つーさんからの報告を待った。


この状況でつーさんに休まれるのは正直キツいのでは……。


わたしはハラハラした。そして、ちらりとプロジェクト責任者の顔色をうかがった。

このプロジェクト責任者であるイマダさんは鬼のように恐ろしい人物で、わたしたちは裏で彼を「経済ヤ○ザ」と呼んでいた。

いつも嘘っぽい笑みを浮かべながらえげつない言葉を遣うひとだった。笑ったかと思えば一瞬で人を刺すような視線でにらみつける。こわい。

この状況でイマダさんはつーさんのことをなんて言うだろう。ボロクソに蔑むのだろうか。


しーんと静まり返る会議室。ドキドキしながら待っていると、イマダさんが、ぽつりと言葉を落とした。


「つーさんは、自分のリミットをわかってるからね。」


わたしはこの一言の真意がわからなかったが、イマダさんが「さて」と仕切り直したので、会議に意識を戻す。
彼はつーさんのことを責めることは全くなく、つーさんがいないことで発生する追加タスクの列挙と担当者のアサインを行った。


「基本的に、各人の判断に任せます。迷ったら、おれのところにきてくれれば決めます。」


そうして、朝の会議はおわった。


イマダさんはすべてお見通し

このとき、わたしは一番下っ端だった。もちろん迷うことだらけだったので、今日どうしても進めなければならないものだけをイマダさんに相談しにいかねばならない。


こわい……。

イマダさんは中身だけでなく見た目もこわいひとだったので、わたしはちょっとだけ苦手だった。しかしこれも仕事だ、やらねばならない。

おそるおそるイマダさんの席まで行って(当時はまだフル出勤かつデスク指定制だった)、悩んでいる箇所を相談する。


イマダさんは本部長にあたる役職で、プロジェクトマネージャーだったから、本来ならばわたしのような下っ端のぺーぺーのくだらない悩みなんて聞く暇もないはずだったのに、この日は嫌な顔ひとつせずわたしの話を聞いてくれた。

そして、相談事項がひとしきり片付いたあと、イマダさんは「最近遅いけど、だいじょうぶ?」とわたしの体調を気遣ってくれた。


「はい、だいじょうぶです」
「ここんとこ、毎日終電だよね。先週はタクシー帰りもあったんでしょ、経費精算で見たよ。」
「(そんなことまで知ってるのか……)はい、でも寝れば元気になるんで。」
「若さだねェ……」


イマダさんは19階のオフィスから東京の狭い空を見つめる。

「つーさんは、自分のリミットがわかってるからね。限界超えそうになったら休むってことを知ってるからさ」



公認の「ズル休み」

わたしは驚いて二の句が告げなかった。

それって、今日、つーさんは風邪じゃなくてズル休みってこと……?

わたしが混乱していると、イマダさんはフォローするように続ける。


「でも、それでいいとおれは思うんだよ。つぶれちゃったら元も子もねェから。つぶれる前だったら、少しの休みで回復できる。限界突破してしまったら、回復するのにすごく時間がかかるからさ。おれもつーさんも、それを良く知ってる。そういうやつをたくさん見てきたんだよ。」


26歳のわたしに、その考えはひとつもなかった。
つらいときに休む、そんなこと許されるはずがないと思っていたからだ。


「だからまみさんもね、つらいときは休むんだよ。おれだって休むんだからさ。つーさんも、明日には来るよ。」


その言葉通り、つーさんは翌日元気に会社にやってきた。咳ひとつもしない、完璧な体調で。



「ズル休み力」は非難されることではない

それ以降、わたしは、本当につらいときは会社を休むようになった。

大きなプロジェクトの渦中にいては、どうしてもストレスがたまる。そんなときほど、「自分が抜けたら迷惑がかかるから、絶対に出社せねばならない」と思ってしまう。

でも本当は、そういうときこそ意図的な休息が必要なのだ。いわば「ズル休み力」である。


朝、どうしても起きられないとき。寝ても覚めても仕事のことを考えてしまうとき。
そんなときは、思い切って1日休んでしまってはどうだろうか。


そうしたらきっとあなたも、つーさんやイマダさんのように、心身ともリフレッシュして翌日からフルスロットルで過ごせるはずだから。




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まみ┆元管理職、キャリアブレイク中
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