見出し画像

『BLEACH』の巻頭ポエムベスト10を作ろうと思ったら意外とベスト6ぐらいまでしかなかったけどもうこれでいいやと妥協してみた

秋アニメで『BLEACH 千年血戦篇』が始まって、非常に懐かしい気分になったので、もはや何番煎じの企画になるか分かりませんが、個人的にお気に入りの巻頭ポエムを選んでみました。

当初はベスト10を選ぶつもりでしたが、「自分の心に響いた」という観点で選択すると結果的にベスト6になってしまいました(笑

一応、執筆に際し改めて全ての巻頭ポエムをおさらいしましたが、やっぱり強いのは当時に大いに感銘を受けて今なお印象に残っているポエムなんですよね。

なので、結果として「そういやこんなのもあったな」というポエムはここには残りませんでした。

それでは、暇つぶしにでもご覧いただければ幸いです。



【第6位】

僕は ついてゆけるだろうか
君のいない世界のスピードに

――@黒崎一護『BLEACH』第49巻


なにかとネタにされている印象もあるポエムですが、当時すごく感心した覚えがあります。

もし大事な人を失ってしまって、この世の終わりのような気持ちになってしまったとき、どうして世界はこんなにも当たり前に回り続けているんだろうってことをきっと考えてしまうのかもしれないな…と。

そんな時、止まってしまった自分の時間と比べて、その当たり前の周りの人たちの暮らしのスピードがとても速く目まぐるしいものに感じてしまうっていうのはすごく腑に落ちた気がして。

ポエムでも「ついてゆけるだろうか」とあるように、ここではきっとそうした「予感」に対する「怖れ」を表現しているんですよね。

そんなところも含めて、お気に入りのポエムですね。



【第5位】

ぼくは ただ きみに
さよならを言う練習をする

――@吉良イヅル『BLEACH』第15巻


書いてて気付いたんですけど、なにげに先のポエムが「僕」だったのに対してこちらは「ぼく」となっていますね。

日本の国語の問題って、よくこういうところに意味を見出して「その違いについて説明せよ」みたいな問題にしてしまいがちですけど、多分この違いにそんな深い意味は無いと思っています。

あえて言うなら、久保先生がたまたまこの時は「ぼく」と表現したかっただけなのでしょう(笑

「三番隊」って隊員各々が独特の陰鬱として孤高たる矜持を持っている感じがして、けっこうお気に入りですね。

隊の矜持も「戦いは絶望に満ち陰惨なものでなくてはならず、それゆえ人は戦いを恐れ避ける道を選択する」となっていますし、そういう雰囲気に惹かれて集まったということなら当然といえば当然なのかしら…。

このポエムも「来たるべきその時」に備えてという雰囲気を纏っていますが、きっとその「別れ」は彼自身から切り出すことになるのでしょう。

先のポエムも含めて、自分はきっとこういう「予感」という情緒を感じさせる表現が好きなんだろうな…。



【第4位】

あたしの心に 指を入れないで

――@毒ヶ峰リルカ『BLEACH』第51巻


もうこれは試合開始の初球を捉えて右中間真っ二つって感じですね。

目にしたその瞬間にその「不快さ」とか「気持ち悪さ」が瞬時に伝わる素晴らしい表現だと思います。

リルカという乙女チックかつメンヘラチックなキャラにも非常にマッチしていますしね。

彼女の完現術の「ドールハウス」は、彼女が許可したものを、彼女が好きなものや可愛いと思ったものの中に閉じ込めてしまうという能力ですが、他人の自由を束縛してしまう能力を持つ彼女が、逆に自分の心の中に入ってこられるのは許せないっていうのはさもありなんといった感じですね。

「千年血戦篇」でもその姿が見られるでしょうから、今から楽しみにしています。



【第3位】

どいつもこいつも、ぶっ壊れちまえ

――@グリムジョー・ジャガージャック『BLEACH』第24巻


もはやポエムと呼んでいいかどうかも怪しいところですが、やたらと長たらしいものよりも、このポエムのように鋭くズバッと一言で表現してくれる方が自分の琴線に触れる確率は高いような気がします。

このポエムからは一見粗暴な印象を受けますが、グリムジョーというキャラを通して捉えると、どこかその言葉にも「怒り」と同時に「虚しさ」とか「寂しさ」といった複数の入り混じった感情も感じられて、なかなか深い言葉のように思えてくるから不思議です。

少なくとも、彼はこの言葉の表面上の意味通りの只の乱暴者でも思慮に欠ける浅はかな者でもないですからね。

そんな彼を一言で上手く表現した良いポエムだと思います。



【第2位】

剣を握らなければ おまえを守れない
剣を握ったままでは おまえを抱き締められない

――@茶渡泰虎『BLEACH』第5巻


ここからの2つのポエムは個人的に別格扱いですね。

このポエムには『BLEACH』という作品の枠を超えて本当に感銘を受けて、久保先生は天才かよ…と本気で思いました。

解説するのももはや野暮なことのように思えてしまいますが、愛する人と一緒にいるためには「戦い」が必要だと…そして、その「戦い」に向かうためには一緒にはいられないという「二律背反」がどうしようもなく悲しくそして美しく感じられます。

「槍」でも「矛」でも「刀」でも「斧」でもなくて「剣」なんですよね。

2音で語感的なリズムも良く、かつ「戦いの象徴」の言葉として、正に最適解だったと思います。

そして、彼の場合は「剣」=「拳」にも繋がるのかな…と。

唯一、泣き所を挙げるとすれば、作中のストーリーではこのポエムを象徴するような設定やシーンに恵まれなかったというところぐらいでしょうか。

この辺りは自分の読解力が及んでいない可能性もありますので、いやいやそんなことはありませんぜというご意見がございましたら、是非ご教示いただければ幸いです。



【第1位】

美しきを愛に譬ふのは 愛の姿を知らぬ者
醜きを愛に譬ふのは 愛を知ったと驕る者

――@市丸ギン『BLEACH』第20巻


もはやこのポエムの存在が、今回の記事の執筆の原動力となったと言っても過言ではないですね。

ポエム自体の素晴らしさもさることながら、特筆すべきは「市丸ギン」という行動原理の掴めない底知れない不気味なキャラの魅力を120%の言葉で表現し切ったという点ですね。

本作品の巻頭ポエムは、表紙を飾ったキャラの在り方を象徴するものとなっていますが、先のポエムのようにストーリーへのリンクという観点からは距離を感じてしまうものも多いんですよね。

しかし、このポエムは違う。

先にも述べたとおり、表面上のストーリーからは読み取りにくい「市丸ギン」というキャラの行動原理をこのポエムが完全に補完しきっており、その時全てが腑に落ちるように見事に仕組まれています。

きっとこの言葉がなければ、自分はここまで彼の人間性を魅力的に感じることは無かったことでしょう。

純粋にポエムとしても非常に魅力的であり、「愛」というものは「美しい」とか「醜い」とかそんな陳腐で世俗的な言葉では表すことはできない、むしろ言葉で簡単に表そうとすること自体が愚かであるものなのだと気付かされます。

しかし、そんな彼を突き動かしているのもやはり「愛」であったのだと。

最後までそれに殉じた見事な散り際でしたね…。


いいなと思ったら応援しよう!