棚貸し本屋の店番日記 #4 棚主さんのこと
ビールが呑める大人の図書館。
夢オチの可能性も残しつつ、数年後の実現を目標に、まずはシェア型書店の棚主になりました。
初めて西日暮里に降り立ち、BOOK APARTMENTさんの敷居を跨いだのが昨年の11月。もうすぐ半年、早いもんですね。
月に1、2度のペースで店番に入ってます。
街中にある新刊書店と比べると、初見のお客さんも含め雑談を交わす機会が多い気がします。棚ごとにオーナーがいて、扱う本に特色が出ますから、会話につながりやすいのでしょう。
また、noteでご縁のある方々にもお越し頂き、嬉しい限りです。
基本、お酒が無ければ、人様と打ち解けるのに年単位の時間が必要です。けれど本という共通項のおかげか、案外コミュニケーションが取れている気がします。あくまで「自分調べ」なので、勘違いの可能性もありますが。
ところでお店には、お客さんとnoterさんだけでなく、棚主の方もいらっしゃいます。本の補充に来られたり、会社帰りにふらっと立ち寄られたり。
これまでに2回、棚主の交流会がありました。
お店の営業が終わった後に、銘々が呑みたいもの、食べたいものを持ち寄る形式。集合も解散もそれぞれという負担の少ないスタイル。企画してくれた棚主さんに感謝です。
本好き、棚主同士という気安さもあって、最初の350ml缶が空く頃には、皆さん程よく緊張がほぐれます。
お会いできたのは、一箱古本市のご常連、閉店した書店を復活させるプロジェクトの関係者、図書館の館長、手作り菓子の販売もされる棚主さん、親子で出店している小学生をはじめ、ホントに様々。
家と職場の往復では、袖振り合うことすら稀だったことでしょう。
そんな皆さんと飲んでいたときに
「探している本があるんです」
とお客さんが訪れ、居合わせたメンバー総出で棚を捜索したことがありました。
酔っていたのであやふやですが、たぶんお目当ての本は無かったはず。
それでもお客さんと棚主が本の話で盛り上がるのを眺めながら
「もしも本棚に心があって喋ることができたら、こんな風だろうな」
なんて思っていました。
先日、住んでいる町の本屋さんが閉店しました。
駅前でしたが近隣には大型店、高齢のご店主、ネット販売と、理由はいろいろあるのでしょう。
本への情熱を持つ人は確実に存在します。
反面、書店の減少が止まらないという現実もあります。
そんな中で、全国にシェア型書店が増え、各地に棚主さんが生まれていることは、数少ない福音ではないでしょうか。
本屋を愛する人たち、それぞれの好きが手を取り合って広がる、目の粗いつながり。
ネットのような情報量、便利さはありませんが、同じ土俵では押し出されるだけなので、違うやり方がいいのだと思います。
棚主の緩やかな連帯が、本を取り巻く環境に何かしらの変化をもたらす。まるで日本のあちらこちらで「アルコール発酵」が起こっているようで、一杯やりたくなりますね。
正直、ビールが呑める大人の図書館が実現しても、それだけでメシを食っていけると思ってはいません。
寝付きが悪く、夢よりも現実を見てしまうお年頃。ドキドキワクワクの冒険よりも、安心安定の保険を求めちゃいます。だから今の仕事に軸足を置きつつ、稼ぎとへそくりの範囲内で出来るお店を開くのが、当座の目標です。
棚主さんたちとの交流を広げながら、引き続きうまいやり方と物件を探していきます。
■□■ 次回店番のお知らせ ■□■
西日暮里BOOK APARTMENTさんの棚をお借りして、酒と料理の読みものを中心に、集めた本を販売しています。
次回は4月8日(土)12:00〜16:00で店番に入ります。
春は新しいことを始めたくなる季節。谷根千エリアで本屋巡り。行き先のひとつに、私の棚はいかがでしょうか。