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やらかしマッスル(こしあん)|酒と肴 その八十七
現実って辛いじゃないですか。
日々、スマホの向こう側では目を見張ることが起こりがち。ですからなるべく薄目で見たり、目を逸らすように心掛けています。何のことはありません、ドライアイ対策です。うぶな季節はとうに過ぎました。
長いこと人間をやっていると、辛い現実には甘いご褒美が必要だと気付きます。セルフプロデュースのアメとムチ、つまりは自己愛です。
誰しも心にナルキッソスがいなければ、世間の荒波はしみることでしょう。
だけど悲しいかな、世の中には弱り目につけ込む悪い奴がいるんです。
何でも嘘のアドバイスを信じて、傷ついた身体を海水に浸したばっかりに、症状が悪化した白うさぎがいたそうです。
善意を装った第三者だなんて非道い話ですね。しかも相手は神様だったというじゃないですか?古事記の時代から、こんな話は枚挙にいとまがありません。
そんなヒロシに騙されないよう、自分のご機嫌は自分で整えます。あんこを拵えハイボールでやるという可愛がりです。
買い置きの小豆を測って煮る、ここまでは良かったんですよ。
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ところがふと
「今日はこしあんにしてみよっか?」
なんて思ったのが運の尽き。
粒あんに比べて倍の時間、労力に至ってはそれ以上に掛かりました。
正直、「漉す」って行為をナメていたんです。
中ジョッキよりも重たいものは、大ジョッキしか持たないアルコール中年。茹でた小豆をヘラでグッとやれば、マックシェイクみたいにズルーッと出てくると思っていたんです。世間知らずですね。
あんなにグイグイやっても、ミクロン単位でしか漉せないと知っていたら、休日の午後に始めたりしなかったのに。
本当にもう、少なめの100gにしておいて良かったです。か弱い細腕がパンプアップしましたが、おかげで口あたり柔らかなこしあんを味わうことが出来ました。これが倍量だったら、今頃ボディビルの大会で掛け声をもらっていることでしょう。
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当然プロには及びませんが、手間暇かかった分だけ愛おしく、渋みすら旨味に感じます。
出来上がった時にはすっかり夕暮れでしたので、まずは酒の肴に。トリスで頂きます。
今回はせっかく漉したので、いつもは添えるだけのマスカルポーネと混ぜて、小洒落てみました。
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いやいや良かったですね。ぺろっとやって、ハイボールを口にすれば、かかった苦労がふんわりシュワシュワ溶けていきます。
次もまた漉すかと言われたら、正直即答はできません。来年の夏、もしもフィジークに挑戦することになったらチャレンジしようと思います。
メニューと材料
・こしあん(小豆、砂糖、塩、昆布)
・小洒落た肴(こしあん、マスカルポーネチーズ、アーモンド)
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