読書「ISSUE DRIVEN⑤完」~相手にイシューを伝える~
新人の頃は上司から振られた仕事に対して成果を出すことに努めてきました。最近、この仕事ってホントにやるべきこと?と自問することが増えてきました。そんななか、ネットニュースで紹介されていたのが安宅和人さんの本書となります。安宅さんはシン・ニホンを書かれた方であり、最近ではコロナ関連の討論会などでも発言されており注目されております。
※以下、本書に書かれていることに関して私が学んだと思う内容を抜粋しております。感想を「終わりに」に書きます。
・プレゼンの目的は相手と自分の知識ギャップを埋めること
イシュー、ストーリーライン、絵コンテ、分析作業が終わったら最後はイシューに沿ったメッセージを人に強く伝わるようにまとめる最後のステップに入ります。
まず、このまとめ作業に入る前に「どのような状態になればこのプロジェクトは終わるのか」という具体的なイメージを描く必要があります。人の心にインパクトを残し、価値を納得させることが私たちが目指す到達点となります。そのために何が必要になるのかを再度深く考える必要があります。
検討報告の最終的なアウトプットはプレゼンや論文というかたちになると思いますが、この目的は第一に「聞き手や読み手と自分の知識ギャップを埋める」ためにあります。聞き終えたときに受け手が自分と同じような問題意識を持ち、同じように興奮してくれているのが理想です。そのような伝わるプレゼンをするためにはシンプルにムダを無くし、明確なイシューを伝え、意識が散るものやあいまいなものはすべて排除させる必要があります。
・ストーリーラインの磨き込みで伝えたいことを明確にする
仕上げの段階ではこれまでの内容を「本質的」「シンプル」という2つの視点での磨き込みを行います。まずはストーリーラインの構造を磨き込んでいきます。以下3つのプロセスでおこないます。
①論理構造を確認する:これまでに作った論理構造においてカギとなる洞察や理由にダブりやモレがないか確認していきます。同時に全体の構造を見直しながら構造上不要となった部分は剥ぎ取っていきます。論理の構造を確認するこの段階で新しい概念が出てきたらオリジナルの名前をつけると効果的です。
②流れを磨く:優れたプレゼンとは「ひとつのテーマから次々とカギとなるサブイシューが広がり、流れを見失うことなく思考が広がっていく」ものです。最終的なメッセージを明確な論理の流れの中で示していくことが理想的となります。この流れを磨き込む作業はほかの誰かと説明しながら話の順番やメッセージのメリハリを修正していくと良いです。そのなかで補強が必要なところは付け足す必要があり、流れに問題を与える部分は大胆に抜いてしまいます。そのあとは本番同様のリハーサルで細かな仕上げをしていきます。聞き手はそのプロジェクトを知らない人がベストで素朴な疑問を参考にして細かな修正をしていきます。自分のプレゼンを録画して自分では気づかない癖や分かりにくい言い回しを見つけることも有効です。
③エレベータテストに備える:エレベータテストとは20~30秒間で複雑なプロジェクトの概要をまとめて伝えるというものであり、このテストによって自分がそのプロジェクトについてどこまで本当に理解し、人に説明し、売り込めるようになっているかについて測ることが出来ます。これまで作り上げた論理構造のなかからカギとなる部分の結論をまとめることが必要です。その際にピラミッド構造でストーリーをまとめることが効果的です。
・相手の腑に落ちるチャートを作る
ストーリーラインを磨き込んだら次に個々のチャートを精査していきます。優れたチャートとは「メッセージ、タイトル、サポート」の3つの要素からできています。
メッセージ:自分が伝えたいこと
タイトル:そのチャートが何を示しているか
サポート:メッセージを支えているもの
イシューに沿ったメッセージがあり、サポート部分のチャートに意味のあるタテヨコの広がりがあり、サポートがシンプルにメッセージを支えていることが必要な条件となります。
チャートを磨き込むために次の3つの作業をおこなっていきます。
1チャート・1メッセージを徹底する:
このチャートで何を言いたいのかをしっかりシンプルな言葉で落とすことが大切です。その際に相手を混乱に落とし込まないためにも1チャートにつき、1メッセージとします。聞き手がわからない状態ができてしまうと、以降のプレゼンは聞いてもらえないことがほとんどです。これ以上簡単にできないほど簡単にすることがプレゼン成功のカギとなります。
タテとヨコの比較軸を磨く:
優れたチャートにはそのメッセージを導くための明確な比較ができています。軸の選択を都合の良いものにせずフェアなものとし、軸の順序に意味を持たせること、軸を統合させたり合成させることによって相手にとって簡単に腑に落ちるものにします。
メッセージと分析表現を揃える:
同じ構成のチャートであっても多数の表現方法が存在します。例えば差分を表すときに実数の差分がいいのか、指数表現とする必要があるのかなどメッセージが明確となる表現を選ぶ工夫が必要です。
~終わりに~
拙い文章だったと思いますが、最後までお読みいただきありがとうございました。
この本の最後に著者である安宅和人さんは以下のように述べています。
「僕は今、自分にできる限りの深いレベルまで、知的生産におけるシンプルな本質を伝えた。あとは、あなたが自分で経験する以外の方法はないはずだ」
また、「自分の目と耳と頭を頼りにして経験を一つ一つ繰り返して身につける以外の方法はない」とも語っています。
大切なのは本書に書かれた問題解決方法を実践して自分流に落とし込んでいくことなのかなと感じました。慣れないうちは頭がまわらずもどかしいこともあると思いますが、この方法を使っていき習慣化することで無意識のうちに自分流になっていくのかなとも思いました。
本書のなかで特に参考になると感じた点は、イシュー分解のときに「コンセプト」、「エコノミクス」、「運用方法」という3つの観点から切り分ける方法です。これらは設備設計提案書などでも活きると思います。今後、自分流のフレームワークを作れるくらいに落とし込んでいきたいと思います。
また、時間ベースで考えるのかアウトプットベースで考えるかといった概念も深く学ぶことが出来ました。
(以下、本書に書かれていること)
肉体労働者を示すレイバラーは拘束時間に対して給料をもらうことを示す言葉であり、サラリーマンも意味合いとしてはかなり近いところにあります。一方でビジネスパーソンとは自分の仕事に関わるハンドルを握る側の人という意味があり、アウトプットにコミットして評価される人たちです。働いた時間ではなく、”どこまで変化を起こせるか”によって対価をもらい評価される、あるいはどこまで意味のあるアウトプットを生み出せるかによって存在意義が決まります。高い生産性を生み出すためにはそうした生き方へとスイッチを入れることが重要となります。
私はあまりビジネスパーソンとサラリーマンの仕事の違いについて気にしていませんでした。自分の仕事を振り返ると、充実していると感じているものは何か改善させるような仕事です。私は一般的に退屈と思えるような作業に関してそこまで嫌いではないのですが、充実していると感じられるのは変化を生むアウトプットが求められる仕事です。これからは在宅ワークも増え、アウトプットの質がより一層問われてくると思います。そのあたりも意識してビジネスパーソンとしての仕事に取り組んでいけたらと思いました。