ひとり暮らしおめでとう
辰巳渚さんの本は、何冊か持っている。
家事を通して、自分の暮らしの実感を通して、人生や世の中にフォーカスする視点が好きなのだ。
うちの子ども達は、大学進学と同時に、家を出て一人暮らしをしたいと言っている。
だから最近は、不安や寂しさを覚えつつも、密かに心の準備を始めている。
そんな時に読んだこの本。
これは、ひとり暮らしを始める若い人に向けて、また、子どもをひとり暮らしさせる親御さんにむけて書かれた本なのだが、辰巳さんの、地方でひとり暮らしをしながら大学に通う息子さんに向けて書かれたようにも読める(あとがきで息子さんがそう書かれている)。
衣食住の整え方の具体的なこと…もちろん書かれている。
お金の使い方などの大事なこと…もちろん書かれている。
でも私がいちばん心を打たれたのは、
「他人を頼りなさい」と書いてあったこと。
ひとり暮らしをするというと、何でもひとりでこなさなければ、と気負いがちだけれど、そもそも人は、なんでもひとりでできたりしない。
ひとり暮らしをするということは、できるかぎり自分の力でやってみる努力をしつつ、一方では、自分の限界やひとりの孤独を知ることでもある。
それを知るからこそ、他者の存在をありがたく思い、助けを請うことができる。
辰巳さんの言葉を借りれば、「なんでも自分でなんとかできると思うのは、無知というもの」なのだそうだ。
ひとり暮らしの経験から、「必要に応じて支援を求められる柔軟さと賢明さを持てるようになっていることを期待しています。」とも書かれている。
「ひとりで暮らす」をつきつめて考えたら、「上手に他者と共存する」に行き着くということが、感慨深かった。
それならば、私は、子どもを手放す親の不安や寂しさをこらえてでも、一度は子どもを外に出そう。ひとり暮らしをさせてみよう。
「ひとり暮らし、おめでとう。」
そう言って、自立の第一歩を祝おう。
この本を、私はきっと、何度も読み返すだろう。
そして、巣立つ日の子どもの荷物にも、必ず入れると決めている。
ブログには、もう少し詳しく書いています。