海岸線は無風

2023年 自選100首

【お詫び】この人生は映画ではなくて、当人はやはり凡人でした

in the 銀河heaven
泣かないでジョバンニ 君は悪くない　きれいなものだけみたかったよね

ぼくだって死にたくなんかなかったと泣いてるカンパネルラの隣

買ってきた仏花が枯れるまでそこで合掌なさい 隣家のザネリ

牛乳を持ってジョバンニが駆けている。一方、そのころうすあかりの国

｢よだかさえ悪口言われて死んだのに人の子が耐えうるはずない」と神

できるなら全てを憎みたかったね　はやくしにたい　つよくなりたい　Sancta Maria

ステンドグラスの隙間にいる天使　聖母マリアを流し目で見る

「まともな人のほうがよっぽどこわいよ」と革靴残しそのまま落ちた

あの星はよだかではなく 燃え尽き損なった花火の欠片です 博士

これがあたしのリアルラヴ
一瞬であればあるほどその後が辛いと泣いてる内ももにキス

絶頂と号哭の狭間でにぎりこむ爪が刺さってとてもかなしい

痛みごと愛してくれとは言わないが洗濯物は取り込んどいて

あの人の喪主になりたい　打ち覆い越しにさいごのキスをあげたい

箸で骨つまむとき痛いかもだから　やさしく　やさしく　　　あっ

リトルバイリトル　女のままであの女が欲しいと思う感情

傷口をわざわざ開いて唾つける夜だってある こっち見んなよ

ひとりでも立ち上がれること知っている 早く世界はわたしにあやまれ

さも平気そうなあなたの横顔に（やさしくきれいだ）触れたかったよ

本当は大丈夫じゃない君だけどたぶん一緒に逃げてはくれない

手紙なら涙ごと君に送れるが ふきだしはただ液晶に海

春巻きを巻いて餃子のみみとじて　繕ってばかりいるのに、いいの？

願わくばこのさみしさがきみまでも蝕むことがありませんよう

もういいよ　きみはじゅうぶん傷つき終えました 鬼は帰りましたよ

防波堤として
二枚貝みたいな合掌 息が出来ないのはここが海底だから

黒檀の長髪ゆっくり確かめてゆっくりなでる　なんでもできる

明け方に背中丸めてまだ寝てるお前の指の関節食べる

シルバニアファミリーの赤ちゃんの耳塞ぎ俯きひたすら怒号に耐える

シルバニアファミリー横に並べたらみんな大好き国家統一

生花だと知らない間に枯れるから造花でいいのと穴に差し込む

さざなみのほころびの中に飛び込んで救いなんて何度も　いらない

思想ごと愛してください　銀匙でキウイの中の星空　(掬/救)う

それじゃあね、また会いましょうね、元気でね、無数の痛みを数えましょうね。

傷つけた後に一人で泣いている あなたの思想になりたい正午

足元でバタバタうるさい余所の子を蹴飛ばす　覚める　夢でよかった

しわしわになった不織布おしこんで　わたしほんとうこわかったのよ

望まれて生まれてきたから望まれて死にたいうそですママありがとう

もし魚だったら泣いたってバレないし、嗚咽は口からこぼれるあぶく

あたたかい湯船に浸かる 魚なら死んじゃうね 私ひとでよかった

無痛エンディング
村すらも滅ぼせないのね魔王さま　ふたりでしようよ世界征服

人を殺すのはつらいね魔王さま　ふたりでしようよ投身自殺

あの花の名前を教えて魔王さま　ふたりでいこうよ川の向こうへ

傷ついてばかりだったね魔王さま　きっと今度は大丈夫だよ

＊

観葉植物の茎をへし折って この世の王になりたい夜半

約束の国に行けないお前ごと この世の王にしてやる夜半

アイデンティティの喪失(笑) この世の王になれない夜半

＊

プレゼントとかなくていいから年一じゃなく月一で会いに来てサンタ

｢最近の子が欲しがるものは高くてね｣ 目元とかシワが目立つよサンタ

足腰が辛いならもう代わるからいつまでも笑顔をみせてよサンタ

＊

HP赤ゲージMP0なのにどうして諦めないの、勇者ロト

もうぜんぶ諦めたってふうに笑う ルイージ、君はたかく飛べるよ

大人はみんな大人のフリをしていた
殴りたい顔面があった中学生　抱きしめてみたい背中もあったね

赤と青の血が心臓で混ざり合い紫になってめぐる教科書

水泳の後の御ミサでシスターのコリントの信徒への手紙 　「愛は」

周期表の呪文が思い出せなくて私魔法使いじゃなかった

404　(学生時代の恋ってさ、純愛だよね) NOT FOUND

かけっこもコンクールも営業成績も一位になれない私の挽歌

投げつけてやりたい缶コーヒーだけど課長は子供がいるし

戦士にも僧侶にも転職出来やしない私が戦う上司モンスター

「まともです」という顔をしてPCに貼り付ける【１４時半会議】

少しだけ見えた歯茎に何となく悪い気がしてまなこそらした

泣きながら帰った夜道の街灯が宝石みたいで少しかわいい

「し」と打つと３つ目の予測変換に「自殺」がでてきてその後「仕事」

休職をしたと言ったら給食？と聞き返されて、それありがとう

ただ１人立ち上がるしかない君へ、冷蔵庫にケーキあるから食べな

またいつか忘れるために覚えてて 子供の頃のしょうらいのゆめ

イフ・ストーリー・ユー
概念の話をしながら夜道にはただひたすらの満月だった

幸せになってほしいと言った時応えるような手のひらだった

もう全て滅んだ町で無声映画だけが虚しく８月だった

ちょっと地球機嫌が悪いみたいだね　思っていたより汚れてた海

田園に並んだ生首らが生前小指で結わえた約束の数

自分だけ残された街で映画館跡地を国土としてオリオン座

無秩序な黎明　ギリ許容範囲の現実　どうか花束をくれ

飲み込んだ線香花火のとんがりがまだ胃の中で燻り　あ　いたい

道路でも海でも未来でももう何でもいいから私の背中を押して

掴むのは虚空ではなく指の先　ほろびるまえに会えてよかった

逃避行、海岸線は無風
シロイルカ産の光輪触ったら、もう君だけのものだ、ゆるすよ

あのね、もし、おまえが法律おかしても、わたしは、ゆるすよ、　　　、

逃げながら好きな曲とか教えてよ　あ、Bluetooth繋いでいいよ

ふざけ合い触れた手のひら今だけは輪廻のことを忘れていたい

誰にでも平等なあなたの体臭は私だけ知っていればいい深夜

海街の夜景が水面に反射して竜宮城からクレーム５件

あの人が好きだったジュース飲みながらあの人が死んだ海を見ている

美しい思い出聞かせて順不同　変わらないなら美化すればいい

人工的な眠気の僅かな不快感　まぶたの裏の海は静かに

体裁があってよかったさざなみに触れたのがつま先だけでよかった

壊れかけのイヤホンと残り１０パーのスマホ、私の脳みそ　しぶとい

長すぎるイントロの波くぐりぬけ運転手が何か言ってる

均等に灯る降車の赤色が魂みたいで少し震える

間違えたくなかった僕らの流星群　死にゆく星に願いなどない

＊

喜怒哀楽　ユーエンミーでスピッツを流してドライブしようよ今夜

喜怒哀楽　だるいずっと副作用霞んだ視界で踊る虫　しね

喜怒哀楽　知ってた？裸足で歩いたら結構痛い地面であること

喜怒哀楽　どうかそのままの君だけが真実であるよう祈っています

喜怒哀楽　好きなバンドの新譜のせいで仕方ないがまだ生きねばと

喜怒哀楽　生命線を比べ合いそのまま繋いで１本にしよ

喜怒哀楽　人々の生活が少し重なった箱で軽いうたた寝

喜怒哀楽　探してはみたけど私たち同じ空の下にいなかったっぽい

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･･･

アテンションプリーズ　繰り返します　この人生はフィクションです

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「お元気ですか　私のほうは、ままならぬ心をなでる日々です　草々」