心と身体と呼吸を整える。弓道の美しさ。
私は部活に一生懸命取り組んだ経験がありません。
中高生の頃は身体が弱く、部活に打ち込む事がお医者さんから禁止されていました。
そんな私が初めて一生懸命になれた部活が大学の弓道部。
弓道部は柔道・剣道・合気道などと同じ武道会。
先輩・後輩の規律から、立ち歩きの所作、武道場を使用する際の作法まで非常に厳格であり凛とした世界。そんな初めての世界が楽しくて楽しくて。
毎日毎日、授業の合間や、バイトが終わって夜中にも弓をひきに行きました。
しかしそんな生活に無理がたたり、大学でも腎臓が壊れかけ途中で辞めなくてはいけなくなりました。
なので私はこれまで何もやり遂げた部活がありません。
高校3年生の息子くん、先月最後の弓道の大会。
息子くんは中学生の頃から6年間弓道部。
朝練は勿論。昼休憩ですらお弁当を弓道場で食べ、弓をひく。
そんな夢中になって自身の射を探求し続ける息子くん。最後までしっかりやり遂げる彼が眩しくて羨ましくて。。。
弓道は力任せにひいても全く真っ直ぐに飛びません。
美しくバランスのとれた射形。でもそれは外見の美しさだけではなく呼吸が整い、心も平穏で、的だけを見据えてただただ集中…。全体のバランスに息を合わせて矢を放つ。
弦音が響き、的に矢がパスッと刺さる。。。
簡単そうに見えて、シンプルだからこその難しさ。美しさ。
私達の生活には弓道が語源の言葉が沢山あります。
「そんな筈じゃない」の『筈』や、「図星だ」とか、「矢継ぎ早に話す」の『矢継ぎ早』、「手ぐすね引いて待つ」の『手ぐすね』など。
弓道の所作や一つ一つの動作、心得は人生にも通じている。人は心と身体と呼吸が整う時に最大限に力を発揮できる!
うちの息子くんは弓道を通じて何を学んだんだろう。
息子くんは小学生の頃、野球のクラブチームに入りました。6年生の夏前肘を壊した彼は、毎回毎回練習は「走れ」と指示されるばかり。ある日「走れ」と指示されたまま忘れられ一日中走っていたことも。肘が直っても試合には出してもらえず、ずっとずっと走らされて最後まで試合に出れず卒団に。
息子くんの気持ちを想うと心が締め付けられる想いで、卒団式の日のママからのメッセージ。言葉にしようとしても、何もしてやれなかった自分の不甲斐ない気持ちと相まって涙が止まらず。ただただ一言「あなたはママの誇りです」
最近息子くんがさらりと「6年生の頃に沢山走ったから足が早くなったんだと思うんだ」
私が勝手に哀しい思い出にしていただけで、彼の中では前向きな想い出だった!勝手に決めつけていたのは私だったんだと気づくと、哀しい思い出に色がつく。。。
野球を走り切りやり抜く、弓道も探求し続けやり切った。
私に出来なかったことを二回もやって見せてくれた息子くん。すごいなぁと心から尊敬します。
何より私がやり残した弓道を最後までやり切ってくれてありがとう!!
思い出とそれを彩る色は、後からでもどんどんと塗り替えられる。子育ての醍醐味を実感し感謝。