バリウムと採血がすげえ嫌だったのに、別の出来事のせいでぶっ飛んだ話
さて、行ってきましたよ。
健康診断。
普段はフルリモートなので朝も7時台に起きれば十分なのですが、今日は8時45分に丸の内ということで、いつも以上に頑張って起きることに。
朝はこんなに寒いのか。
今は駅ってこれくらい混むのか。
丸の内に行く前に色々と発見があります。普段は家の近所で完結しているのですが、世界が広がることにも少し上がるものがありました。
ただ、悲しいかな、朝一で行うのは健康診断ですから、多少早めに出て喫茶店に入って時間を潰したり何かを胃に収めたりという孤高の行為は全て奪われている訳で、黙って私はクリニックに向かいました。
受付のお姉さんから色々と説明を受けるのですが、前もって用意したものを渡すだけでは終わらないんですよね。
こういう説明をかなり適当に聞いてしまうという悪い癖が私にはありまして。
完全に更衣室の場所を聞き逃してしまっておりまして。ただ、どうも左側とは言われたのですが、左を見ても女性用の更衣室しかないんですよね。
流石に男性の私が女性用の更衣室に一直線に向かったら変態ですから、敢えて逆に行くことにしますと「19番のお客さまー!」と呼び止められ、女性用の更衣室の左隣の死角に当たる部分に男性用のそれがある訳です。
最初からしょっぱいトラップにモロにハマってテンションが下がる中、一通り着替えて想うことはどうしてもバリウムと採血のことです。
いやー
なんで昨日私はあんなことを書いてしまったんだろう。
あれは嫌だと書いた手前、すげえ気になっちゃうんですよね。言葉って不思議なもんですよ。出してしまうと本人も暗示されるところがあるんで、いつも以上にバリウムと採血が超不安で、嫌なんです。
待合室で「スッキリ!」が放送されているんですけどこっちは全然スッキリじゃねえよ!って思いながらふと待っていますと、ここ結構デカいクリニックなんですよね。
健診を受ける人たちはみんな胸にナンバーを振っているんですけど、50人くらい居るんですよ。で、項目が15個くらいありますから、空いたところにポンポン入れられる訳です。
患者(この場合そう呼ぶのだろうか)を大きな声で誘導して、待合室に連れていく白衣というか、半袖の看護師服に身を固めた担当の方がきびきび動いているんですよ。
そのせいか、まだ9時前なのに身長測ったりお医者さんに診察してもらったり、時間かからないやつがスイスイ進んでいくんですね。
あーちょっとウエストは上がっちゃったなぁとか、眼底にポフっと空気を賭けて写真を撮影するときに不意に目を瞑った時に
「お客様のまつげが長くてちょっと上手く撮れなかったんでもう一回いいですか?」
とか言われてあーこういう嫌な思いをさせないで再撮影させる言い訳って色々あるんだろうなぁとか、ちょっとした発見が色々ある中で待合室と診察室を行ったり期待するんですよ。
でね。
きびきび動く半袖の看護師服の皆様にデカい声で19番が何度も呼ばれる中で30分も経たない間に殆ど終わっちゃったのですが…
バリウムと採血が終わってないんですよ。
両方。
おいおい。
あんなに二つの怖さとか嫌だとかいう話を散々した中で両方とも最終盤に配備されるとかマジで勘弁してくれよと思いながら私はスマホを眺めてどうにか嫌な気持ちを和らげようとするのですが、その時。
「19番のお客様~~~♡」
なんか19番こと私を診察室越しに呼ぶ声が。
普段はきびきびと大きな声で我々患者を呼ぶシステムのようなのですが、診察室から呼ばれたことにまず違和感。
そして「~~♡」の部分なんですけど、これ全然誇張じゃないですからね。
朝に聞くにしてはやけに艶やかな声なんですよ。声の主が指を一本一本関節一つずつ動かして手招きしているような、そんなニュアンスのボイスで、ビックリするんです。
男女問わず半袖の看護師服の方達は超姿勢が良くてちょい背筋がマイナスの方向に反っているような、体育会系な人たちが集う中で一人だけ紛れ込んできたように甘ったるい声で呼ばれるんで、まぁとりあえず入ります。
話を聞くと、どうやら胃カメラを外部から撮影できるようなものみたいで、特殊なカメラを使って腹をそのお姉さんが撮影するようなんです。
「では、ゼリーをかけますね♡」
撮影をするのに特殊なゼリーを腹の上からかけなければいけないみたいなんですけど、「♡」の分だけドギマギするんですよ。
あたしゃ42歳ですよ。でもね、なんか「電影少女」とか「Boys be…」とか読んでいる時のニシオ少年に6割くらい戻って動揺するんですよ。さすがに。
なんとか自分を42歳に戻そうとするんですけど、寝ながらぬるいゼリーをこの艶やかなお姉さまに掛けられているのでどうしてもニシオ少年の方がガーっと出てきてしまう。朝っぱらからヘンテコな綱引きしてるんですよ。
「はぁ~~~い、息を、吸ってぇ~~~~♡」
「はぁ~~~い、吐いてぇ~~~♡」
どこからこの「♡」が取れて、この姉さんの素みたいなものが出ないか逆に期待するんですけど、どうも彼女のこれが基本形みたいなんですよね。ずっとこれが続くんです。
そして、吐いた後で腹を特殊なカメラでゴリゴリするんです。
これがね、くすぐったいんですよ。
朝っぱらから一体何なんだよこれは。
腹にぬるいゼリー塗られて、カメラでゴリゴリやられて、変にくすぐったくて、しかもお姉さんの声が超甘ったるい。
普段の生活とか面識がある人が相手だったらここで私も「いやーなんかちょっとニシオ少年に戻った感じになっちゃいますよーハハハ」とかおどけることも出来るんですけど、ここは病院ですからそんな軽口も叩けません。
結局私に出来ることは、この奇妙なシチュエーションコメディにひたすら耐えることだけでした。この日ばかりはマジでマスク社会になっていることに感謝しました。笑いとくすぐったいのをこらえているのと、ニシオ少年に戻って赤面しているところを視認できないからです。
こんな作家が作ったような嘘みたいなコントのような話なんですけど、これは今日実際に丸の内のとあるオフィスビルの4階で発生した実話です。もし希望される方が居れば、そのクリニックの名前を後でお教えします。
ただ。
まだ採血とバリウム終わってないんですよ。
これは困った。
本当に困るんですけど、採血もバリウムも、他のセクションと比べると単純に時間かかるらしいんですよ。だから、他のところで人がポンポン出入りしているのにそっちだけやけに渋滞しているような感じなんですね。
ですから私は仕方が無いので腹部カメラの診察室の付近でスマホ見ながら嫌なこの二つを待っているんですね。
ただ。
定期的に聞こえてくるんですよ。
例の艶やかな声が。
一度ツボに入ると私もう駄目なんですよ。
一通り決着がつくまで面白くて仕方なくなっちゃうんですよね。
だからバリウムと採血待つのはテンション激落ちなんですけど、あの声が聞こえる度にふふってなっちゃって、気持ちが乱高下するんです。
そうこうしている間にどっちも終わりまして。
なんかいつもよりもスムーズというか、大したことなかったように思いました。
まぁたぶんあのお姉さんのお陰ですね。
来年もまたあの丸の内のクリニックに行くか。
気分紛れるし。
ちなみにあの声、誰かの声に似てると思って色々と自分の中の記憶に当てはめてみましたが、どうやら壇蜜さんにそっくりということが分かりました。