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人と波、個性と固有振動数〜"波長が合う"という表現を通じて〜

「波長が合う」

時に私たちは人間関係が良好であることを「波長が合う」と表現している。

何気なく使っている表現だけれど、どこか不思議といえば不思議である。

暗黙のうちに、人を「波」に例えているのだから。

日常生活を思い起こしてみる。

目が覚めて、活動し、そしてまた眠りにつく。

感情にも起伏がある。

人は誰しもリズムや周期性、ゆらぎを抱いている点に鑑みれば、たしかに「波動的な存在」であると思えてくる。

人それぞれ、心が惹かれる物事があれば、あまり心惹かれない物事もある。

心惹かれるとは、「物事との響き合い」あるいは「共鳴」と捉えれば、なお一層のこと、人は波動的であると思えてくる。

人と人の関係も「波と波の重なりあい」あるいは「共鳴」と捉えれば、互いに強めあったり、打ち消しあったりすることがある。

物体が自由な状態で振動するときに、その物体が持つ固有の振動数のことを物理学では「固有振動数」という。

人それぞれに一意的な個性(Uniqueness)や特徴があるけれど、この個性が振動数の「固有性」に重なるように思われる。

このように思い巡らせてみると、人と人との関係性を「波長」で表現された感性豊かな先人は尊敬の念に堪えない。

彫刻を際立たせる水がある。(中略)桂離宮の住吉の松は、池の水面を地に、くっきりと際立った姿を見せていた。水面は、小波にきらめく太陽光の反射と継ぎ目なき連続体において、松とは全く異質な表情をたたえていた。また、保津川の流水面は、天空光を反射して、おでん屋に休む人のシルエットを、くっきりと際立たせるものであった。

鈴木信宏『水空間の演出』

水はまた、楽の音色を際立たせる。(中略)『栄花物語』は、寝殿の前の池の上を、楽の音が移動する様を、「響無量」なりと表現している。(中略)音楽家、武満徹は水上で演奏される音楽の美しさを指摘している。彼によれば、毎年、夏、ミシシッピ河を、ニューオリオンズに向けて下る船の上で、オーケストラの演奏がある。その音楽が水面にぶつかって、響きがきれいだという。さらに、彼は水と音楽についてこんなことを紹介している。NHKの技術研究所で行ったエコー・テストによれば、一番純粋に音を響かせるのは水であり、中でも生ビールの泡の下の響きがきれいなこと。水につけて吹いて、小鳥の鳴き声を出す土笛のこと。ヘンデルの『水の曲』が船上で演奏されたこと、などを。

鈴木信宏『水空間の演出』

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