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ビートたけしのロマンティックな純愛が止まらない映画『アナログ』

なんというロマンティックな物語を書くんだよ、ビートたけしは。

正直言うとコメディアンのビートたけしとしてはあんまり笑ったことがないけれど(僕は上方漫才派だった)、
ロマンティックなビートたけしには何度か大泣きさせられている。

ビートたけし原作、劇団ひとり脚本・監督の『浅草キッド』はヤバかった。
こんなに泣けるのかというくらい泣いた。
あれはズルい。
劇団ひとりには原作・脚本・監督を1人でこなして天才性を見せつけた『青天の霹靂』という号泣作品がある。
そして『青天の霹靂』でも主役を演じた大泉洋もふたたび主役を張る。
彼らがタッグを組んだのだから泣かせない訳がない。

そして、今作『アナログ』もそんなビートたけし原作の一本だ。
『浅草キッド』がひたむきに何かを目指す若者の青春物語であり、師匠とのブラザーフッドでもあった、こちらは純愛。
純愛だよ、純愛。

「あぁ、俺も今すぐ誰かに告白したい」
終盤、桐谷健太演じる親友がそんなセリフを言うシーンがある。
まさにそんな気持ちにさせる、胸キュンもの。

そしてこの映画の純愛はテレビドラマで若者たちが惚れた腫れたとやっているのとは一味違う。
おじさんが見ても十分に感情移入出来る純愛ドラマだ。

なにせ、波瑠演じる主役の彼女ミハルミユキはスマホも携帯も持っていない。
連絡先交換もしない。
細かい出自も分からない。

もう1人の主役は二宮和也演じるミズシマサトル。
建築デザイナーとして活躍する彼はデザイン画は鉛筆デッサン、モックはCGよりは模型。
自分で手を動かして何かを生み出すことを好む。
デジタルな現代に生きる2人の恋は、しかしアナログの世界で育まれていく。

待ち合わせは木曜の夕方、いつものカフェ「Piano」で。
どちらかに予定があって木曜に出会えなければそれも仕方なし。
また来週。

なんというアナログ。
でも、昔はそんな感じだったかもなぁ、と40年以上前の遠い昔をおじさんにも思い出させる。

ゆっくりとお互いへの想いを育み、いよいよサトルがミユキに結婚を申し込もうとした矢先、ミユキがパッタリと姿を表さなくなる。

その翌週もさらに次の週も、そしてひと月もミユキがPianoに姿を表さなくなり、サトルは後悔する。
結婚を匂わすだなんて早まったことをした自分を責め、ミユキのことを忘れようとする。
そんな時、サトルがデザインした大阪のホテル建設プロジェクトも佳境となり、大阪転勤を命じられたこともミユキのことを忘れるきっかけになった。

正直、予告編だけを見ていて、ある日突然彼女が姿を消すこと、それは何かの理由、彼女の素性を隠しており、携帯を持っていないことなどが関係しているであろうこと、は想像していた。
だけど、それがどんな理由によるものなのかがきっと物語のキモなのだろうと考えていたが、予想もしていない展開になった。

予想していたのは、若干のSF的展開で、途中で癌が転移して亡くなってしまうサトルの母親がひょっとするとミユキに関係していて、なんならミユキは母親の若い時なのではないか、そんな風に少し考えていたのだけれど、流石にそれはなかった。

もっと現実的な、そしてもっと悲しい現実をサトルに突きつけるものだった。

少し前の映画だけど、この先はネタバレになるので書かないが、それにしても何と言う純愛。
宣伝ポスターにもなったポスター写真(カバー画像)はそういうことだったのかと。

最後はビートたけしのロマンチシズム全開。
2人の想い出の海岸で奇跡が起こる。
そして、さらにこの先2人はどうなるのか、微かな希望という余韻を残して映画は終わる。

このラストシーンが本当に素晴らしい。
このシーンを観るためにこれまでの2時間ちょっとがあったのだという名シーン。
サトルを演じる二宮和也のナイーブで包み込むような笑顔とそれに応えるミユキを演じる波瑠の表情が素敵すぎる。
あぁぁぁ、号泣だ。

ビートたけしよ、アンタはなんてロマンティックなんだ。

<了>

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