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遅ればせながら、映画「最後の決闘裁判」を観ました
こんにちは、makoto です。
遅ればせながらリドリー・スコット監督の「最後の決闘裁判」をやっと観ました。
アダム・ドライバーが出演しているとなると観ないわけには(*1)いかなかったのですが、劇場公開中はタイミングが合わずに見逃して(*2)しまっていました。最近、Disney+(*3)に来ているなと思っていたので、今日の午前中にやっと。
事前にほとんど情報を仕入れていなかったので(*4)、
・マット・デイモンとアダム・ドライバーが出ている
・中世ヨーロッパの史実に基づいた決闘裁判がテーマのようだ
・監督はリドリー・スコットなので超大作なんだろう
くらいのことしか知らない状態で観ました。
上映時間が2時間36分という長尺なところと、
「最後の決闘裁判」というタイトルも今ひとつピンと来なかったです。
なんとなく昔のヨーロッパでは「決闘だ!」と言って手袋を足元に投げつけるみたいな印象は持っていましたが、それが裁判制度としてもある時期までは成立していたとは、観終わってから調べるまで知らなかったからです。
なんでも製作費が120億円に対して、興行収入が30億円だか40億円だかということらしいので、大コケだったんですね。
観た後の第一の感想は「演出が素晴らしい」映画だということです。
冒頭、最後につながる決闘シーンの始まりを少し見せてから、そこに至るまでの事件の経緯を、3人の主人公の視点で「3回」同じストーリーが繰り返します。
ここでいう3人の主人公(とあえて言ってますが)とは以下の3人です。
マット・デイモン演じるジャン・ド・カルージュ、父の代からの城塞の長官で、父の死後自分が継ぐはずだった長官の役目を元親友に奪われ、あろうことか妻もレイプされてしまいます。王への忠誠も正義感もありますが、寡黙で不器用が故に正しく評価してもらえません。領主に気に入られて出世していく親友のジャックに嫉妬しますが、自分は騎士だというプライドでなんとか自尊心を保っています。
アダム・ドライバー演じるジャック・ル・グリ、ジャンの親友です。家柄も恵まれたものではなかったため、それなりに苦労して従騎士の地位を得ているため、それなりに出世欲もありますが根は実直な人柄が描かれます。見栄えもよく如才ないキャラのため、ベン・アフレック演じる領主のピエール2世に公私に渡り目をかけられて、重職にも取り立てられますが、そのことがきっかけで親友のジャンとの間に亀裂が入り、そして。。。
ジョディ・カマー演じるマルグリット・ド・カルージュ、裕福な家の出で持参金として広大な土地と引き換えに父の思惑通り名家のジャンの妻として嫁ぎます。結婚5年経っても世継ぎが産まれないことから、姑ともうまくいかず、またジャンの自分への愛情が薄れていくのを感じながら、自分は持参金の土地と世継ぎを産むためだけの役割だったのではないかと自信を失っていきます。
同じストーリーが上記の順番で3回繰り返されます。
しかし主観が違うため、微妙に台詞回しやちょっとした仕草、目線などのニュアンスが変わってきます。また、それぞれの立場に応じて登場人物も変わったり、ある特定の人物の時だけのシーンも挿入されます。
例えば、領主のピエール(※5)の台詞の多くはジャック主観で語られていますし、彼のキャラクタは他の2人の主観からは判りません。
その3人の主観・視点で同じ話を繰り返すという演出が秀逸で、
「果たして、真実は何なのか?自分の目で見て確かめてくれ」というメッセージになっています。
そういえば、テレビドラマ「ミステリという勿れ」で菅田将暉演じる整君のセリフでこういうのもありましたね。
「真実は1つだけじゃない、人の数だけ真実はある
だけど事実は1つしかない」
まさに、そういうことで、当時中世ヨーロッパでは
「真実を知っている神だけが裁きを行う」
ということで、決闘という形で当事者が命を賭して闘った結果、真実を述べていたものが神により命を助けられるということになっていたようです。
まっず最初にジャンの視点で事件のあらましが語られ、全く違うジャックの視点で物語を見直してみると、どうしてジャックだけが贔屓にされ重職を与えられるのか、どうして真面目一筋にやっていたジャンが取り残されていくのか、とてもよくわかるようになっていますし、600年後の現代においても会社組織では全く同じような出来事が日々あちらこちらで見受けられます。
自分はあそこまで真面目というわけではないけれどもジャンタイプだったかもな、わかるなぁ身につまされるよね、ツラいねジャン、といった心境でジャックを羨ましく見ていました。
まあ、肝心のレイプシーンは、あくまでも強引な行為はあったけども解釈としてはレイプではなかった、と強気で言えなくもないようなニュアンスもあったのかな、飛ぶ鳥落とす勢いの当時のジャックの立場だったらアリなのかなぁ、とも一瞬思わせる描き方があります。
そして一転、当事者のマルグリット視点になった途端に、やっぱりあれは明らかにレイプだったと思える表現になります。
そして、夫のジャンへの愛情を示すために、また自分は真実を言っていると認めてもらいたいために、それを公言するという判断をとりますが、ジャンの置かれた立場から事態は当人達もそこまでとは思っていなかった結論として決闘裁判を向かえることとなり、後に引けなくなります。
一方、ジャックは自分の出自が自慢できる家柄ではなかったことから、「名前」つまり現在の地位と名誉にあくまでもこだわり、結果として決闘を受けて立つ選択をします。
中世の男は難しい。いや、現在のヤクザ映画でもメンツにこだわるとかはいくらでもあるのか。
決闘裁判の結果はジャンが勝ち、マルグリットの訴えは真実だということになりました。やはり神の裁きはあったんでしょうか。
最後の救いとして、マルグリットはジャンの死後も長きにわたって幸せに暮らしたということでした。
リドリー・スコット恐るべしですね。
配信嫌いの彼の映画を配信で観て申し訳ない気持ちは少しだけありますが。。。
それでは!
注釈
*1 僕はアダム・ドライバーがなんだか好きなんですよね。アダム・ドライバー出演作の一番は「パターソン」です。あの朴訥な静かな感じが合っていると思っています。
*2 最近、劇場上映が終わるのってものすごく早くないですか?特に洋画の上映期間が短い!公開2週間も経つともう1日1回ペース、それも夜遅く、とかになってしまい、3週間経ってもまだしっかり上映されている映画って邦画のアニメかヤンキー映画くらいしかないような気がします。
*3 次男がマーベルファンなので迷うことなく加入しました。上陸当初はディズニーだし子供も大きいから関係ないかと考えていたら、マーベルもルーカスフィルムも20世紀フォックスの映画も観れるので結構最強です。
*4 ネタバレレビュー動画などもほとんど避けてきていました。
基本的には絶対これは観ないという映画以外は、未見の映画についてのレビューはスルーするようにしています。例えネタバレじゃなくても。
*5 ベン・アフレックの金髪姿はとても似合っていますね。バットマンの時より体重も落としているのか、一瞬誰だか分からなかったくらいです。
個人的にはブルース・ウェイン役よりハマっていたと思います。