WRAP(元気回復行動プラン)を作ろう

「ストレス社会」という言葉が日常的に使われるようになってから、
いったい、どのくらい経つでしょうか。

5年前の河合薫氏へのインタビュー記事『今の日本が「ストレス社会」になった理由とは?』を見ると、いま使われているのとまったく同じ意味合いで「ストレス社会」という言葉が既に使われていました。
ちなみに、この記事のなかで河合氏が呼び掛けているストレス対策は、いまでもそのまま有効です。新しい治療法など、精神医療は徐々に進歩しているものの、根本的な状況は(残念ながら)あまり変わっていないようです。

うつ病を発病し、精神科や心療内科に行けば、医師が治してくれるかもしれません。
しかし、情報過多の現代社会においては、それでは遅すぎるのです。多くの場合、一度、精神疾患を発症すると「完治」することは難しい、と言われています。精神医療の現場では、なんとか自分なりに落としどころを見つけて社会復帰できる精神状態を「寛解」と見なし、そこに向けて治療が行われています。しかし、精神疾患を発症してからも、次から次へと情報が降り注ぐ世の中が変わるわけではありません。
現代社会を生きる以上、私たちは常に多くのストレスに曝され続けます。

そこで必要になってくるのが「予防」、あるいは「セルフケア」という考えかたです。
医療に頼る前の段階で、(あるいは医療に頼るようになってからも)日常的に自分の精神状態をセルフケアできるようになっておく。
そのために一番たいせつなのは、何よりもまず、
「ストレスのサインに自分で気付く」こと。
そして気付いたら、次に必要なのが、
「ストレス対処法を自分で実践できるようにする」ことです。
この一連の作業を自分なりにできるように準備しておいて、
1枚の紙にまとめたもの、それがWRAP(元気回復行動プラン)です。

ストレスのサイン(=ストレス反応)には、いくつか種類があります。
「落ち込んだ気分になる」「やる気が出ない」「集中できない」「イライラする」「不安になって落ち着かない」といった、心に出るストレス
「頭痛」「胃痛」「下痢」「じんましん」「腰痛」「高血圧」「眠れない」「慢性的な疲労感」「食欲がない」といった、体に出るストレス
「人付き合いを避けようとする」「他人に対して攻撃的になる」「嗜好品を飲食する量が増える」「ひきこもりがちになる」といった、行動に出るストレス
どれも重要なサインですので、予防したりセルフケアできるようになるためには見逃さないようにしておく必要があります。

ストレスに気付かず、見過ごしたまま溜めてしまうと、深刻なストレス反応である「バーンアウト」と呼ばれる状態に陥ることが知られています。
バーンアウトには、以下のようなものがあります。
・情緒的消耗感(余裕がなくなり、心身ともにすりきれたような状態)
・脱人格化(人が変わったように投げやりな感覚・態度になってしまう)
・個人的達成感の低下(意欲や集中力が低下してミスを繰り返してしまい、自信や充実感がなくなる)
バーンアウトしてしまう前に、WRAPを作って備えておきましょう。

ちなみに、ストレスを解消するための対処のことをコーピングと言います。
コーピングとして一般的に挙げられているのは、以下のようなものです。
・積極的な問題解決(問題の原因を明らかにして、積極的に解決する)
・放棄、あきらめ(問題が起きたことは仕方ないとあきらめる)
・回避、休養(問題そのものから一時的に距離をとる)
・相談(他者からの援助を求める)
・見方を変える(問題を別の視点からみるようにする)

コーピングについては改めて詳しく解説しますので、まずは自分のWRAPを作ってみましょう。私が実際に使っているWRAPをお見せしながら作りかたを動画内で解説しています(動画撮影・編集してくださったハリス丸さん、疑問点を挙げてくださったりむさん、ご協力ありがとうございました)。
『元気回復行動プラン・WRAP解説動画』を観る

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