『あぁブクブク』
芋焼酎を浴びるほど飲んで
陽の高いうちから眠り込んで
気づけば月明かり
島に3台しかないタクシーの
ヨシさんが俺を見つけてくれて
メーターも上げずに
家まで引っ張ってくれるそうだ
気づけばコッチへ移住して
けっこうな時間が過ぎたな
おかげで
地域にはすっかり溶け込めたと
自覚している
島の風を感じて
毎日生きている
そもそも移住に反対していた妻は
ちょっと前に子供たちを連れて
島を出ていった
そりゃそうだな
明るいうちから酒をくらって
毎晩のように島の誰かに
担がれて帰宅する
こんな旦那は嫌だよな
ただでさえ広々と使っていた一軒家が
独り身になって
もっと広く使えるようになった
あぁそうかそうか
自宅で酒盛りしてもいいんだよな
今度からはそうしよう
ヨシさんの運転するタクシーは
かなりふらついている
港に続いてるこの道は
ガードレールもなくすぐに海だから
ちょっと危ない
あぁ
あれ?
---
東京から鳴り物入りで村長に当選
俺の夢見た酒飲み経済特区は
見事にこの島で実現された
焼酎の自家製造を可能とする
酒税消費税はなし
公務員も勤務中の飲酒が可能
もちろんクルマの運転も…
酒飲みにとって
とても幸せな?法案が
成立したわけ
しかし案の定
うすうすわかってはいたけども
俺も含めた島民皆が
飲んだくれて
衰退した
もはやこの俺も
村長の自覚なし
あぁブクブク
タクシーが
海に沈む
ソーダ割みたいに
泡になる