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エッセイ

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2020年9月の記事一覧

丁寧な暮らしがしたい

丁寧な暮らしがしたい

丁寧な暮らしがしたい。私がイメージする《丁寧な》暮らしをする人とは、無駄なものを買わないミニマリストであり、無添加食品の素材の味だけで満足できるような、そんなイメージ。そしてみんな麻の服を着ている。



先日、友人と雑貨屋さん巡りをした。ショッピングモールに入っているようなガチャガチャした雑貨屋さんではなくて、個人経営の、その人の趣味が凝縮された雑貨屋さんだ。

アパートの一室でひっそりと営業

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秋忘れ

秋忘れ

まだ8月の気分だねと話しかけられる。1年早いですねえ、朝晩が涼しくなってきていいですねえ、と期待通りの返事をする。あんなに夏を楽しみにしていたのに、気がついたらまた遠ざかっているではないか。夏の間自分が何をしたのか思い出せず、スケジュール帳を確認すると近所のコンビニに行く予定だけがぽつんと書かれていた。



ラジオ体操が良いというツイートを見たので早速始めてみる。普段全く運動をしないがこれくら

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9月10日 晴れ

9月10日 晴れ

歯科矯正器具を着けられた。ゴツゴツした金具が口内を占拠している。自分の歯なのに自分のものではないような違和感と鈍い痛みがある。

夕飯に食べた焼き鮭の骨が器具に絡まってしまう。私はそれを丁寧に引き抜いた。なんだか剣を抜く時の騎士みたいだ、と楽しくなる。

9月5日 くもり

9月5日 くもり

お気に入りのカフェに行った。いつも座るカウンター席がいっぱいだったので、仕方なく違う席に座る。少し離れたところで男性が連れの方にビジネスの話をしていた。ネズミ講のようだ。しばらく聞いていても話が単調でつまらなかったので憤慨しながら店を出る。

思いのままに声にするということ

思いのままに声にするということ

「あなた、自分の思ったことをそのまま口にしなさい」

また占いに行った。今年でもう3回目だ。占いに行きたくなる時は大抵仕事の悩みがある時。こんな会社やめてやる!と思うほどでもないし、でも一生続けるのは嫌だなあという時。何か決定打があればすぐ転職に踏み出せるのに、それはまだ無い。しかし毎日モヤモヤするのだ。今より良い環境があるかもしれない、そんな気持ちがいつも心のどこかにある。

占いに行き始めた頃

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母の背中

母の背中

川上弘美さんエッセイ 「なんとなくな日々」より

台所の闇
台所には台所の神がいたり、台所は生と死に深くつながる場所だと言われたり、なるほど台所は便所と同じく特別な場所なのだろう。いちにち家の中にいて夜が来ると、自然に気持ちが台所に向かうことがある。何かを作ったり洗ったりするというわけでもなく、台所にただ佇んでじっとしていたいような心もちになるのである。冷蔵庫がぶうんと唸る音を聞いたり、電子レンジ

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私にだけ聴こえている世界

私にだけ聴こえている世界

幼少の頃から音楽が好きだった。外を歩くとき、家事をするとき、寝起き、昼休み、帰宅中、夜寝る前、四六時中音楽を聴いている。学生の時からずっとだ。学生時代は受験勉強の息抜きに、バスに乗っている間だけ聴いていいというルールを作っていた。Plastic TreeのSinkを聴いて何度も泣いたし、春咲センチメンタルを聴いて合格する未来を思い描いた。家庭内で諍いがあったときも、音楽だけが私を支えてくれた。

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