「痛みに強いんですね」という言葉を、今でもおまじないのように持ち歩いている
歯科手術をした。手術といってもストレッチャーに乗せられるような大きなものではなく、【親知らずを抜く】の2乗程度。顎変形症の治療の一環で、口の中の骨にアンカースクリューと呼ばれるネジを埋め込むのだ。
大学病院の薄暗い廊下。歯医者さん特有のドリルの音がする。怖くないと思っていたはずなのに足が震える。タオル生地のハンカチを握りしめぎゅっと目を閉じた。10年前、息子を出産した際に「痛みに強いのね」と褒められた(そう思い込んでいるだけかもしれない。鈍感だという嫌味だった可能性もある)