キューバの野球ファンは議論が好き
宗教と政治、そして野球は、酒の席でタブーとされる話題といわれます。
口論になりやすいというのがその理由です。
ところ変わって、野球大国キューバには「野球の話をするための場」が、街のあちこちにあり、"エスキーナ・カリエンテ"(ホット・コーナー)と呼ばれています。
首都ハバナの中心部にある、パルケ・セントラル(中央公園)の一角もそのひとつ。よく野球ファンが集まって、人だかりができていました(写真)。
チームのこと、選手のこと、試合のこと。大声で白熱するさまは、ときにけんかしているようにも見えます。
殴り合いにこそなりませんが、なかなかの迫力。耳をそばだてて近寄ってみたら、なぜか「危ないよ」とまわりの人に止められてしまいました。
現在は残念ながら、コロナ禍のため、エスキーナ・カリエンテでの野球談議もままならないようです。
政策について激しくディベートを交わす
野球だけではありません。キューバでは人びとが政治についても、よく議論しています。
今、キューバ国内で経済改革がおこなわれていますが、国民が改革の内容について激しい討論をたたかわせているようです。そもそも、家族や友人と政治の話をするのは日常風景だとか。
キューバに2年住んでいるというオーストラリア人は「キューバの国会中継をテレビで見るのが面白い」と話していました。「議員が何時間も熱く議論している。オーストラリアよりも民主主義だと感じる」とも。
口論のあとの気まずさを避ける
それにしても野球や政治の議論で相手と対立したら、「そのあと気まずくならないのか」とキューバの人に聞いたことがあります。
返ってきた答えは「ならないんじゃない(逆にどうして?)」といった感じで、そもそも意見がぶつかることに抵抗がないと言われました。
たしかに、朝から公園で「それは違うぞ!」などと真剣に言い合っている姿は、衝突を当然のことと受け入れているようにみえます。
私自身は、口論になって、お互いが不快な思いをするのはいやだから、政治などの話題には腰が引けてしまいます。
とはいえ、ほかの人がメディアやSNSで、自分の言いたいことを代弁してくれると、すっきりした気分になったりもします。
思いを表現して、ぶつかって、それでも安心していられる。興味が尽きない話題で、そんな、いさぎよい議論ができたらいいなと思いました。
いつかエスキーナ・カリエンテで、ソフトバンクのデスパイネ選手など、日本とキューバで活躍する野球選手たちについて、一緒に話せる日が来たらいいなと夢見ています。