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㉑NICOLAS ハーブ・マイスター No.4 ニコラにとっての「食」とは
Q. ニコラにとっての「食」の意味を話していただけますか?
A. 主に二つあって、
一つ目は「医食同源」に基づく「健康な身体を」を作るものであるということ。
二つ目はフランス人として自然に持っていた感覚で、「社交の場」であるということです。
一つ目の「医食同源」というコンセプトは、
日本に来てから高野山などの僧侶に教わりました。
禅の思想に興味を持っていましたし、
京都や奈良、高野山には一時期よく訪れていました。
「食」は自然と自分をつなぐものです。
たとえ菜食主義のビーガンであっても、
自然の恵みを、「命」を、いただいています。
「自然と命に感謝して食する」
生物の知識を祖父や両親に教わりながら成長した自分には
すっと入ってきたコンセプトでした。
二つ目の「社交」としての食について補足すると、
フランス人にとって食事の時間は「人と話す」時間です。
皆が食事を囲んでテーブルで会話する貴重なコミュニケーションの時間なのです。
わざわざ食事をするための部屋Salle a manger(サル・ア・モンジェ)を作り、
食器やリネンにこだわり、空間を装飾し、
食べる時間を美しくコーディネートするフランスの文化は、
その時間を尊いものとしてとらえた日本の茶の湯のコンセプトに近いかもしれません。
私達は素材のよいものを選び商品として紹介していますが、
「健康になること」のみが目的ではありません。
健康でないと享受できない感動を提供したいのです。
かつてのフェラーリのキャッチコピーで
「私のモーターは魂を持っている」という好きなフレーズがあります。
ディオールは、戦後食べ物が十分でなかった時代に
敢えて「服にお金を使いましょう」と提案しました。
その意図するところは、
私たちは単に高級品を売っているのではない、
「感動」を売っているのだ、というところにありました。
自然から得た恵みを食することによって大都会にいる人も
自然に感動する機会を持つことができます。
自分が体感した自然から得た感動を伝え、
食することによって「よい時間」を過ごすことを提案したいと思っています。
(次回に続く)