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①涸れない泉を見つけた人達 「はじめに」

21世紀を迎えて数年たったのち、配偶者の転勤に帯同する形で、足掛け7年ロンドンとパリに生活する機会を得ました。

欧州内を気軽に旅することができたのはもちろん幸運でしたが、
実は、なんと言っても一番の宝物は、四季折々、近隣の散歩道を歩いた記憶なのです。

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ロンドン郊外のピリムローズ・ヒルからリージェントパークへ続く道、
ハムステッドの丘の斜面に、野の花が次々と開いていく春の瑞々しさは、
また格別でした。

頭上には鈴なりの花をつけたホースチェスナッツの樹々、
足元にはブルー・ベルの透き通るような絨毯を眺め、

ただ自由に思考を巡らせ歩くことのできたあの贅沢な時間を
私は心の底から愛しいと思っています。

20余年同じ勤務先に籍を置き、東京の喧騒の中にいた私を緩やかに順化させ、
次なるチャレンジに少しずつ集中させてくれたのも、
懐深い緑のエネルギーでした。


欧州生活でも多くの出会いがありましたが、日本に正式に帰国した後、
輸入業を中心として起業し、
仕事を通じて個性的なクリエーター達との親交も得ることができました。

黙々と目指したい高みがあり、感動を共有できる人達がいて、
しかも対価を得られる、なんと幸せなことでしょう。


残念ながら私は創造する才には恵まれませんでしたが、
あの「逍遥の記憶」と重ねて、その制作中の境地を、
少しは理解できるような気がしています。


彼らが発露を見いだせたのは、「努力した結果」、「たまたま運がよかった」、
どう解釈もできますが、それだけでなく、

彼らが生み出したものが、その志の高さに共鳴した天とのコラボレーションの賜物のように思えます。

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自分が本当に幸せと感じられる時間を過ごしていると、
「今を大切に」と、あらゆるものへ感謝とともに、
周りとも幸せをシェアできるようになり、
その気持ちは涸れることのない泉のように湧き出てきます。

彼らのおかげで自分の世界が広がっていくことを至福と感じられる私も、
遅まきながら、その泉のほとりに辿り着くことができたのかもしれません。


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