![見出し画像](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/158317833/rectangle_large_type_2_0923410b1bd1f57db86f1b08c1e502eb.jpg?width=1200)
今だったら違う表現がされているかも~『ウォーリアー』感想(ネタバレあり)〜
(以下、『ウォーリアー』の感想ですが、物語の核心に迫るようなネタバレがあります。ご注意ください。また、『クリード 過去の逆襲』のネタバレにも触れていますので、そちらもご注意ください。)
リバイバル上映で、映画館で鑑賞しました。
粒子感のある荒い映像がスクリーンに映し出されたとたんに、「うわ、映画だな~」という感慨(?)に浸り、いきなりテンションが上がります。
陰影をはっきりとつけて、顔のアップを多用するショットも大画面で見ると迫力があって、「映画館で見てよかったな」と思いました。
脚本と演出も細かい部分を押さえた丁寧な造りです。特に、兄ブレンダンの娘の誕生日パーティーのシーン。弟との対照的な境遇を描くのかと思いきや、プレゼントをめぐる夫婦の会話で「この家族はお金に困っている」「ブレンダンは相談せずに一人で物事を決める傾向がある」などの情報をさりげなく示す部分は「上手い!」と唸らされました。
また、愛していると言葉で伝えられなかったり、苦しい時に辛いと言えなかったりとコミュニケーション不全が原因で疎遠になってしまった主人公の兄弟とその父親の変化をボクシングに絡めて端的に表現しており、見事でした。
しかしながら、「男たちのディスコミュニケーション」をテーマにして男性キャラクターの掘り下げが丁寧にされている一方で、女性キャラクターたちは男性たちの周辺で陰になっているような描かれ方をされています。主人公の兄弟の母親は病気で既に死亡しており、ブレンダンの妻は独断で突き進んでいく夫に付き合わされています(最終的には受け入れているように見えますが、結果的に試合に勝ち進んでいるからというだけで、根本的な問題は解決されていないと思います)。今回(2024年10月)の上映はリバイバルであり、この映画が作られたのは2011年ですが、もし今この映画が作られていたら、これらの描写について違った表現がなされていると思います。
また、娘の心臓病の治療費を払ったことで家を失いそうになるが、最終的には格闘技大会の賞金を得ることでピンチを脱する、という展開も「これで本当に良かったのか?なにか根本的な重要な問題が解決されていない気が・・・」とちょっともやもやしてしまったのも事実です。何か大きな社会問題が個人の境遇に矮小化されて一攫千金によって解決されたことになる、という構図が、いまいち飲み込めなかったというか。
そして、いくつかの他のスポーツ映画にも言えることだと思いますが、「一つの試合に勝つことで、他の様々な問題も同時に解決される」という展開に、ちょっと白けてしまったのも事実です。「文字通り拳を交えることによって、断絶が合った同士が分かりあえる」という最近では『クリード 過去の逆襲』でも描かれたクライマックスのストーリーも、個人的には(決着のつけ方には納得するものの)「これで兄弟間のコミュニケーションがとれたことになるのかな?」とあまり納得ができるものではありませんでした。
劇中に登場するトーナメント形式の大会も、兄弟以外の選手はストーリー上全て「噛ませ犬」的役割であることは大体わかってしまうわけで、兄弟同士の対決をクライマックスに持ってくる舞台設定にはもっと別の方法があったのではないかとも感じました。