ヤマトタケル物語【隣のシグナス】《2.フレイの船》
こんばんは! 湘南占い◆白樺の騎士団・七庭(ななば)です。
今回は「ヤマトタケル物語【隣のシグナス】」の第2話をお送りします!
前回のお話は下記をご覧ください。(第2話の冒頭にも簡単なあらすじをのせています)
今回のイラストも川上ケイコさんにお願いしました(^^)
トピ画は北欧神話に登場するフレイ様です!
彼がどんなふうに活躍するのか、是非本文で確かめてくださいね(*^^*)
※この作品は私の創作神話です。無断転載、二次利用はご遠慮ください。(©︎2020 白樺の騎士団 七庭育)
◆海の上での出会い
【前回までのあらすじ】ヤマトタケルは大和の国の皇子として諸国を平定する旅をしていた。病に倒れた後、彼は白鳥の姿になり故郷へと舞い戻る。やがて旅心が芽生えた彼は新天地を目指して飛び立っていく。
私は海の上を飛んでいた。
どこへ行くかは、まだ決めていない。
潮風の中で目的地について考えていたとき、一艘の船が目に留まった。
船の上には一人の男が立っている。
金色の髪と青い瞳、そして赤い服。
年齢はおそらく私と同じくらいだと思う。
男を見た瞬間、私はすぐに彼が神であることに気付いた。
異国の神を見るのは、これが初めてだ。
思いきって私は彼の目の前に降り立った。
彼の瞳に白鳥の姿の私が映る。
突然船に現れた私に驚くことなく、彼は笑顔で話しかけてきた。
「こんにちは。君も旅をしているの?」
私は黙って頷いた。
「素敵な翼だね。まるで天使みたいだ。ここでゆっくり休んでいくといいよ」
そう言うと彼は船の上で横になり、眠り始めた。
船は操縦者がいないにも関わらず、順調に進んでいく。
おそらく特別な力を持つ神の船なのだろう。
船には彼以外誰も乗っていない様子だった。
私と同じように、彼も一人旅をしているのかもしれない。
彼の寝顔を眺めていると、不思議と彼に対して親近感を覚えた。
なんとなく彼とは仲良くなれそうな気がする。
その日以来、私は彼の船を寝床にするようになった。
昼間は海上を自由に飛び回り、夜は船の中でぐっすりと眠る。
これまでの人生では考えられないほど悠々自適な生活だ。
私たちはお互いの名前を知らないままだったが、徐々に心を通わせるようになっていった。
特に言葉を交わしたわけではないのに、なぜか自然とお互いの気持ちを感じとれるのだ。
神同士だからだろうか?
理由はわからないが、とにかく彼と会えて良かったと思う。
寝所を提供してもらっている礼に私が食糧を持っていくと彼はとても喜び、異国の食べ物を分けてくれた。
そのように食糧交換を続けていたある日のこと。
ついに彼が自分自身について語り始めた。
「僕の名前はフレイ。いろいろあって、今は一人で旅をしているんだ」
私が目で続きを促すと、フレイはそのまま話し続けた。
「大きな戦争で一度命を落としたんだけど、運良く再生することができたんだ。これからどう生きていくか迷っていたとき、外の世界を見てみようという気持ちが芽生えて今旅をしてる。ところで君は何者なの? 白鳥の姿をしているけど、それは仮の姿だよね?」
フレイの言葉を聞き、私はもとの姿に戻った。
「私はヤマトタケル。これまでいろいろと親切にしてくれてありがとう」
「いや、礼を言うのはこっちの方だよ。君が隣にいてくれると、心が安らぐんだ。君は僕が自分のことを話し始めるまで何も聞かずにそばにいてくれたでしょ。それがすごく嬉しかった。僕が君の立場だったら、きっとすぐに正体を明かして質問攻めにしちゃうな」
フレイはそう言って笑った。
「"事情を聞かれたら困るな〜"って思っていたのに、聞かれないと却って自分から喋りたくなるものだね。実は僕、結構特殊な人生を歩んできたんだ。話すと長くなるけど、聞いてくれる?」
私が「もちろん」と答えると、フレイは自分の身の上話を始めた。
◆フレイの経歴
「僕の神族は別の神族と戦争をしていたんだけど、なかなか決着がつかなくて和睦を結ぶことにしたんだ。そのときに人質として差し出されたのが父と僕と妹だった。そのときから僕たちは故郷を離れ、別の国で暮らすようになったんだ」
フレイは海を見つめながらそう語った。
「人質と言っても、不自由な点はそんなになかったよ。むしろその神族の国に住んでいるおかげで、いろいろと便利なこともあったし。例えばこの船。これはその神族と縁のある神にもらったもので、折り畳んで運べる上に順風を引き寄せてくれる魔法の船なんだ」
「すごいな。折り畳める船なんて聞いたことがない」
私は素直に驚きを口にした。
「そうだよね。もらったとき僕もすごくビックリしたよ。すごい魔法道具だと思う。ちなみにその神族のリーダーは魔法が得意で、便利な魔法道具をたくさん持っていたんだ。ある日僕はそのリーダーが留守の間、こっそり彼の玉座に座ってみた。その玉座からは世界の全てを見渡せるんだ。そして、そのときにある女性に一目惚れをした」
「へえ。それで?」
「彼女は巨人族の女性だった。僕は彼女と結婚するために魔法の剣を他人に譲ったんだけど、それが原因で戦いに敗れることになってしまったんだ。なんとか蘇生した後、僕は別のものと引き換えに剣を返してもらった。丸腰で旅に出るのは不安だからね」
私はフレイの話を聞いているうちに、私と彼が意外にも共通点が多いことに気付いた。
故郷から離れた場所で生きてきたこと、そして訳あって剣を手放したこと…
不思議なほど似ているなと思う。
彼とここで出会ったことには何か意味があるのかもしれない。
私が思考をめぐらせていると、フレイはこう続けた。
「僕が結婚した後、とてつもなく大きな戦争が起きて世界は終わりを迎えたんだ。戦の最中、剣を持っていなかった僕は鹿の角で戦った。でもやっぱりあの剣がないとだめだったんだ。ただ、妻と一緒になれた幸せを思えば剣を手放したことに後悔はない。こうして生き返ることもできたし」
フレイの瞳には妻への強い想いが宿っていた。
「あとはさっきしゃべった通りだよ。今度は君の話を聞きたいな」
フレイにそう言われたので、私はこれまでのことを簡単に話した。
「そっか、君も剣を手放したことがあったんだ。なんだか僕たちって境遇がちょっと似てるね。ところで君の剣は今どこにあるの?」
「妻の故郷で保管されているよ」
「取りに行かなくていいの?」
フレイにそう言われ、私は少し驚いた。
「そんなこと考えたこともなかったなあ」
「まあ白鳥の姿で過ごしてたら、剣のことなんて考えないよね。でも、気になるなら取りに行った方がいいよ」
「確かに、今後必要になる可能性もあるよな。取りに行こうかな」
「それなら僕も一緒に行くよ。僕は魔法を使えるし、便利な道具もたくさん持ってる。きっと君の力になれると思う。ついでに君の国を見せてよ」
「ありがとう。心強いよ」
こうして私はフレイと共に、私の剣が保管されている尾張国へ向かうことになった。
本日はここまでです!
お読みいただき、ありがとうございました。
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