ツイッターに疲れた時の"真っ赤なリンゴ"で考える簡単な情報分別
政治問題、凶悪事件、炎上など、ツイッターを利用する上でそのような情報が目に入る事を防ぐのは不可能と言っても過言ではありません。それらの情報を元に、一般人から専門家、赤の他人から友人に至るまで様々な人々が話し合っているのを日々目にします。話し合いだけならどうという事はないのですが、攻撃的な言説によって喧嘩や誹謗中傷が発生している状況も多々観測されます。そのような光景を眺めるだけでも混乱したり、疲れてしまうといった事があるのではないかと思います。
そうしたSNSを利用する上でのストレスを少しでも軽減できるればと思い、本記事を執筆する次第です。
"真っ赤なリンゴ"とは"事実"を抽象的に表したもの
あなたの目の前に真っ赤なリンゴがあるとします。とにかく鮮やかな真っ赤なリンゴです。次に、2人の人物が、その真っ赤なリンゴについてあなたに説明しています。その内容は以下の通りです。
では、考えてみてください。正解はなんでしょうか。
正解は、「食べてみなければ分からない」です。
彼らは実際にリンゴを食べたとは一言も言っておらず、ただただ断言口調で"解釈"をしているにすぎません。ここで分かっている事実は、目の前に真っ赤なリンゴがあるという事のみです。解釈の段階では、話者自身の個人的経験則に基づいた思い込みや偏見の混ざった論理が容易に形成できるため、このように真逆の見解を導き出す事もあるのです。しかし、冷静に観察しなければこの2人の人物の話は、あたかも事実を述べているように感じてしまいませんか?
このようなものは、ツイッターの気軽なつぶやきからニュース記事、陰謀論から学者の書籍に至るまで、巷で目にする言説のあらゆる所に潜んでいるように感じます。そしてツイッターではそのような、話者の主観の好悪により考察された、あたかも事実のようであるが実際には分からない言説を見た人が、更にまた主観の好悪により、これこそが真に正しいのだ、これは間違いなく誤りだなどと言いながら、あちこちでごちゃごちゃになって言い合いを繰り広げているという事態が多発しています。(もちろん中には学術的・客観的根拠のある話もあります)
多くの人々が、自らのこだわりによって構築させた想像をあたかも事実のように思い込んで話している事に気が付くと、少し物事がクリアに見えてくるでしょう。入ってくる情報を分別するのはもちろん、自分自身の思考整理にもこの方法は適切であると思います。
事実を勝手に作ってしまう"仮説確証型の情報処理"
心理学では、人間はある信念を持つと、それと一致する事象が未来に生じると思い込み、その予期に従って情報を都合よく解釈する傾向があるとされています。これを、仮説確証型の情報処理と言います。
一度何らかの信念を持つと、根拠・証明が無く、多種多様な解釈が存在するにも関わらず、その信念に当てはまる行動を対象者がとった場合に「やっぱり当たっている!」と、あたかも不変的事実のように錯覚し、それを確証としてしまう心理的傾向があるとされています。それだけにとどまらず、自らの信念に当てはまらない事例は無視され、信念に当てはまる事例ばかりがどんどん強化されていく事が分かっています。それらは近年に複数の実験で明かされています。(コーエン 1981、バージとピエトロモナコ 1982、坂本 1995など)
実態の分からない架空の存在を攻撃する人々
様々な攻撃的な言説がネット上には溢れています。それらに対し、混乱してしまうのは致し方ないと思います。しかし、自分を混乱させる派手な言説の数々をよくよく観察してみれば、目の前の真っ赤なリンゴを食べてもいないのに、着色されているとかマズいなどと言っているだけで、実態(つまり事実や根拠)の分からない架空の存在を作り出し、解釈し、決めつけ、信じ込み、攻撃している事が多いと分かってきます。また、それに気が付く事ができず、頭の中で仮説確証型の情報処理を繰り返し行い、思い込みを生み出しながら生きているのだと分かってきます。そして自分自身にも、そのような思い込みや偏見による意識の運動が存在しているのだと分かってきます。それらが分かってくると、文章を読む際により視点がクリアになり、過激で攻撃的な人々の言説に、混乱する事も少なくなるのではと考えています。