同調圧力(闇祓/辻村深月)
この新しい造語から始まる物語。
転校生、隣人、同僚、班長、家族と、バラバラながらどれも身近なシチュエーションを通じて、”闇ハラ”が展開されていく構成だった。
転校生の章は、ある日高校にやってきた不気味な転校生が、実は「闇を振り撒く人の闇を祓うことを生業にする人=闇祓だった!」という、すずめの戸締り的なファンタジー。
ちょっとついていけないかもと思いながら読み進めると、団地の主婦がマウントを取り合う「隣人」の章がリアルで引き込まれ、最後まで面白く読めた。辻村深月は嫌な女を書くのが上手いとあらためて思う。人物像に深みはないのに、それがかえってリアルに感じられるのが不思議。
闇ハラは、誰かが誰かに悪意を向けると、私も俺もと周りの人が騒ぎ立て始める”同調圧力”とも言い換えられるような気がする。
SNSでは、良いニュースより悪いニュースの方が2倍拡散されると何かで読んだけれど、みんな他人の不幸が好きだし、共通の敵をもつことで結束が強まるようにできているのだから仕方ない。
この作品は、希望のある終わり方ではなかった。”闇祓”など存在しない現実世界では、個人個人がうまく避けて生きていくしかない、というメッセージだろうか。
元気すぎる人といると、かえって元気を吸い取られることもあるな、と思いながら闇ハラの対義語を考えたら、かつて有吉がベッキーに付けた”元気の押し売り”というキャッチコピー(あだ名?)を思い出した。