見出し画像

鷹揚であること(GIVE&TAKE「与える人」こそ成功する時代/アダム・グラント)

自己啓発臭のするタイトルに怯みながらも、すすめられたので読んでみたら、意外と面白かったので記録。

人間には3つのタイプがある。
ギバー(人に惜しみなく与える人)、テイカー(真っ先に自分の利益を優先させる人)、マッチャー(損得のバランスを考える人)だ。
仕事においては、いずれのタイプもメリットとデメリットがあるが、調査の結果最も生産性の低いグループにいるのはギバーだった。自分を犠牲にして他人の利益を優先するからだ。しかし驚くことに、最も成功を収めるのもまたギバーだった。エンジニアも医者も販売員も、学生の成績をみても結果は同じで、テイカーとマッチャ―はおそらく「ほどほどの成功」に留まる。

では、成功するギバーはそうでないギバーと何が違うのか?
それは、彼らは自己犠牲タイプではなく他者志向タイプであるということ。自己犠牲タイプのギバーは周囲からサポートを受けることに居心地の悪さを感じ、それが精神的にも肉体的にもダメージを及ぼす。一方で他者志向タイプのギバーは、他人を助けるのが楽しくて自らそうするが、いざという時は助けを求めることも厭わない。

「与える人が成功する」というロジックは、起きるまでに時間がかかる。時間的に鷹揚でないとギバーにはなれない。マッチャ―は自分が誰かにしてあげたことを損得勘定に置き換えて自分の「記録ノート」につけている。対してギバーは「記憶ノート」にいい思い出を残すことを大事にしている。だから時間が経っても人間関係を再構築することができ、そこから恩恵を受けていくのだ。

「ザ・シンプソンズ」の脚本家ジョージ・マイヤーはギバーで、建築家フランク・ロイド・ライトはテイカーだった。
私はライト建築が好きなので、ライトが弟子を無給でこき使っていた話はショックだったが、彼のような優秀な建築家は「常識に逆らい、クリエイティブなアイデアを生み出し、また、これらのアイデアを押し通すためなら苦しい戦いも厭わないだけの自信がある」こともわかっている。
一方でマイヤーのように「番組を見る人と製作に関わる人を幸せにする」という他者志向的な意義をもち、彼自信も周囲の人もハッピーにしてしまうようなクリエイターもいる。ギバーだからクリエイティブでない、という図式は成り立たない。

テイカーを見分ける具体的な方法も紹介されていた。
テイカーな社長は、一人称がWeよりI、報酬がべらぼうに高い、年次報告書に自分の顔をでかでか載せる。一般人なら、Facebookのプロフィール写真の露出度が高い、友達がやたら多い人は要注意とのこと。

読み終わり、自分はどのタイプだろうかと考えた。
私はおそらくマッチャ―だ。自分が「してあげた」と思ったことを嫌になるほど覚えているし、贈り物をもらったらお返しをしないと気が済まない。
ITが発達したいま、「待てない」私たちが時間的に鷹揚であることはどんどん難しくなっている。はい、私は今日からギバーです!などと宣言したところでそうなれるわけではないが、せめて時間的に鷹揚な人間でありたいと願った。



いいなと思ったら応援しよう!

この記事が参加している募集