誤解できないように書く(理科系の作文技術/木下是雄)
「理科系」の論文に特化した作文手法を、物理学の教授が横書きで綴った新書。初版発行は50年以上も前で、2014年時点で79刷という大ベストセラーなのに全然知らなかった。
出版社で働くド文系の私は、人並み以上には文章の見せ方を心得ているつもりだが、理科系に特化した本作ならではの発見があったのでメモ。
・パラグラフの重要性
日本語の論文では、パラグラフの内容や相互の連関が全体を読んで初めて分かる、という状態が許される。本当は各パラグラフの冒頭をつなげるだけで意味が分かるようにするのが理想であり、英語の論文ではそれが当たり前とされている。
・明言を避けるな
外海からの異民族の侵入を防ぎ、同族だけが狭い島に閉じこもって暮らしてきた島国日本では、「みんなに同調すること」が大切な生活の心得だった。だから自分の意見を明確に主張してぶつけるよりも、ぼやかした表現で相手の意向を問いかけ、相手が決めたような形にして実は八分通りは自己の意見を通すのをよしとしてきた。
しかし論文では「〜だと思われる」などを多用せず、明言した方がよい。
また、理解できるように書くだけでなく、誤解できないように書かなければならない。
・記号を効果的に使え
日本語には関係代名詞(whichやthat)がないので、文章が複雑な構成になりがちである。だから、パーレン()やブラケット[]、ブレース{}を効果的に使った方が読みやすくなる場合がある。
・何度でも書き直せ
「完全」を追求する執念を持つべし。
以上。
ところどころ入る添削例がガチ理系論文で意味不明だったのと、50年前の作品ゆえ手書きを前提とした章があり残念だったものの、趣旨は分かりやすく面白かった。
曖昧な表現を好む国民性が島国という地理に起因するのだとしたら、イギリス人の皮肉なんかも島国ゆえのものなのかな?と、島国と言語の関係性について興味が湧いた。
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