生き残る文系(文系AI人材になる/野口竜司)
〜統計・プラグラミングの知識は不要〜という副題のついた、文系による文系のためのAI入門書。
少し前まではAIをゼロから作れる理系(データサイエンティストやプログラマー)が重宝されていたが、AIを簡単に作れるようになったこれからの時代は、AIを使いこなせる文系が必要だよ、という内容だった。
AIのキホン
入門書らしくAIの基本は解説してあるのだが、「丸暗記でいい」というザ・文系の指南。
・AI、機械学習、ディープラーニングの違い
→AIの中に機械学習が含まれ、その中にディープラーニングが含まれる
・学習方法の3分類→教師あり/なし/強化学習
・AIを機能別に分けると識別系/予測系/会話系/実行系の4タイプ
・AIを役割別に分けると代行型/拡張型の2タイプ
など。
AI企画力を磨く
そもそもAIを使うべきか否か?使うとしたら、ゼロから作るのか今あるサービスを使うのか?というところから始める。
次に5W1H(誰のための?なぜAIが必要?どのタイプのAI?どんなAI?いつまでにどう用意する?どう分業する?)で解像度を上げる。
組織の中で企画するなら、できるだけ大きな変化量を生み出せるAIを企画することが大事。
AI事例
具体的な事例の紹介。この章、すごく面白かった。
2020年に発行された本なので、いまはもっと違うパターンの事例が増えているのだろうけど、それでも知らない話ばかりだった。
以下、印象に残ったものメモ。
・ソフトバンク、新卒採用業務でAIを活用
過去のESを全て学習させモデル構築。ESの合否をAIが判定し、不合格のものは人がチェック。作業時間を4分の1に短縮した。
→何をもって加点され、減点されるのか気になる。「代表」や「バイトリーダー」「海外」とかで加点されるの?
・トランスコスモス、退職予備軍を予測し、半年で離職者を半分に
コールセンタースタッフのオペレーター属性、勤怠、パフォーマンス等によって退職予備軍をAIで予測。予測精度95%を達成。退職予備軍には面談などの事前予防策を実施し、半分近いオペレーターの離職を抑止することに成功。
→「こいつ辞めそう」とAIにジャッジされる世界は嫌だな、と思いつつも、うつ病予備軍なんかにも応用できそうな気がした。(もうしてそう)
・さいたま市、固定資産税調査に航空写真照合AIを利用
従来は人が1枚ずつ航空写真を見比べて家屋にかかる固定資産税を決定していたが、AIに学習させ、新築や増築の可能性がある家屋を識別。これまで2人で3日かけて行っていた作業が数十分で完了。
→てかそんな面倒くさいことしてたんか、という驚き。電通によるマグロの目利きAIも紹介されていて、識別系の仕事は真っ先になくなっていくことがよくわかった。
・ALSOK、困っている人を自動検知するAI
道に迷い辺りを見渡している人、体調が悪くしゃがみこんでいる人などの「困っている人」をAIで自動検知。体調がすぐれない人がいれば警備員のスマホに通知し、必要に応じて対応。パトロール警備員の「見回り」をAIで補助し、セキュリティ向上や事故防止に繋げる。
→「JR東が防犯カメラの顔認識で犯罪者を検知していたけど法的に許されなかった」というニュースを思い出した。個人識別については全然法律が追いついてないけれど、識別しなければこういう使い方はもう普通にされているのだな。
総じて驚いたのが、「ここまで細分化されているのか」ということだった。レントゲン写真でAIが病気を見つけることで救われる人は何億といるが、マグロの目利きAIを必要としている人の単位は想像もつかない。開発コストが下がっているからこそ、パイが小さくても成立するのだろうか。
著者は、今後AIはEXCELくらい誰もが使うツールになると宣言している。
Chat GPTやMidjourneyをみんな面白がって使っているいま、既にその時代が到来しているのかもしれない。