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再びドライブマイカー ボクには「あざとい」映画だった

2022年3月29日
タイトル通り、ネガティブな意見ですので、せっかくのお祝いムードの中、読んで気分を害したくない人はスルーしてください。
さて再びドライブマイカーです。3週間前に感想文を書きました。
クラシカルなテーマだが手練手管はスゴかった

この時、もう一度観ていいレベルの4.5点を付けたものの、実はそれほど高く評価していませんでした。テーマがクラシカルであるとか、自分には刺さらなかったなどと書きました。ビートルズなど、直接関係のない話をたくさん書いています。

特にタイトルの「手練手管」は、この言葉にはネガティブな意味があることを知っていて、あえて付けていました。
「手練手管」は、人をあざむき、コントロールする手段の意味です。この映画は、観客をあざむく技術がスゴイと表現したのです。そう、この映画は「あざとい」と感じたのです。

芸術的な表現を越えて、賞狙いの「あざとさ」が漏れ出ている印象が強かったのです。
最も強く感じたシーンは、車のルーフから煙草を持った手を出すシーンです。何やら、それらしいシーンです。2本の手が煙突のように出て、夜の街を車が疾走しています。実に何かを表現している雰囲気たっぷりです。
しかしボクには、あざとさしか感じられなかった。何やら芸術的っぽいが、意味のない、空虚なものを感じてしまいました。
煙草に風を当てたら、煙草が不味くなるのは喫煙者にとって常識です。そもそも火種が飛んでいってしまう恐れがあります。車中で煙だけを外に出す方法はあのやり方じゃない。煙草の吸い方を知らない人の演出なので、元喫煙者のボクにはリアリティを感じられなかったのです。

他にも、それらしいシーンが多かった印象でしたが、忘れました。

もう一度観ていいレベルの4.5点を付けたという意味は、もう一度観て、それらの技術を確認して感心したいという意味なのでした。

そしてその「あざとさ」を確信したのは、アカデミー賞の受賞式での監督のスピーチでした。曰く「喪失と再生というテーマが時代に合っていた。響き合っていた」とのことでした。

自分から言うことなのでしょうか。大きいものを獲得した人が、コロナや戦争で喪失感を味わった人たちと響き合ったと言っているのです。その感覚と、映画のあざとさが、ボクの中でまさしく響き合ってしまった。

そもそも、監督自らが映画のテーマを語るものなのでしょうか。テーマは観客が感じ取るものだと思うのですが。
今から観る人は「喪失と再生」しばりになってしまい、映画を楽しむ要素が半減してしまいます。そのへんのデリカシーがないのです。

穿ちすぎかな。天邪鬼なので。
ボクの中の僅かなクリエイター魂が嫉妬しているのかもしれません。それだとしたら醜い話です。

ただ、焼却炉と実家の映像的対比表現は、とんでもなく芸術的でしたと言っておきます。それではまた。

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