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読書感想『鉄鼠の檻』※ネタバレ注意

今週読み終わった本は(10月3日に読み終わっていました……)著作京極夏彦の百鬼夜行シリーズ第四弾、『鉄鼠の檻』でした!
1300ページの超大作!内容の重さ、言葉の難しさも相まって超タフで超面白い作品でした!

感想も読みながら3回に分けて書いていました。一節は552ページまででここは泰全老師が死ぬところまで、二節は松宮人如さんの語りが始まる前、そして三節は最後まで、と分けたのでその時々の頃を思い出しながら書いていきます。

感想其の壹:頁552迄

今回の舞台は箱根、今の箱根と言ったら完全に開発され切った温泉&観光都市であるが、このお話の頃はまだまだ完全じゃない発展途中の箱根。
京極の話がおもしろいのはやはり戦前の空気感が残りつつ、それでいて新しい時代の空気感、システムが作られていく狭間に舞台があるからであり、今回の明慧寺という舞台はシステムの隙間、時代の狭間にあるからこそより異界として際立つなと思います。今の時代を舞台にしたら絶対作れない空気感ですよね~。

そして今回追加されるエッセンスはなんと禅宗。めちゃくちゃ難しい世界!
泰全老師のお話はとても面白いけれど、難しい。なにより自分と向き合い続ける方々なので会話劇になるとより異質感がすごい。
やはりこれだけキャラが出てきてるのに詰まることなく読める京極夏彦の会話劇の面白さは凄い。坊さんの中にすら違いが作れるの凄い。

今回のミステリーは今までよりも単純そうに見える。ただ、明慧寺という異世界に語り部たちが巻き込まれ、勝手に異界を拡大しているおかげでめちゃくちゃになっている気がしてならない(後からみるとかなり良い線をいってる気がする)。

過去三作以上に時代錯誤が侵食してくる感覚がとても面白い!!

感想其の貳:頁975迄

泰全老師以降そこまで物語が進んだ気がしない。ひたすら登場人物が迷ってる姿を400ページくらい読んだのかな?という感覚。
ただ、飯窪さんや博行さんの話などが出てきて物語の輪郭が見えてきたような気がする。この手の物語の組み立て方は本当に上手い。

個人的にはこんな感じで組み立てられていると思っている。

中心が結末だとすると、この4本線は登場人物の現在と過去など作中で語られる一人称の物語、そしてこの赤い曲線は読んでいるときの物語の読まされ方という感じです。
この組み立て方が独特でとてつもなく混乱する面白い作品になっているなと思いました。

それにしても京極堂の憑き物落としはやっぱり興奮します。ミニVerでしたが、鉄鼠というものと禅などの解説が難しいし何もわかっていないような気がしてますけどそれでも面白いものでした。
それにやっぱり京極堂が出てくると一気に現在というか現実に帰ってきたような安心感が読んでいてもします。
それだけあの異界を作り上げるための会話劇などがずば抜けてうまいんだなと改めて思わされる作品です。

感想其の參:頁最後まで

終わってみれば、殺人事件のほうにはそこまで謎らしい謎がなく、なんかあっさりした終わり方だったように感じます。
ただ、松宮・飯窪の過去と鈴、明慧寺とそこにいる禅僧、そしてこの異界を作り上げた小坂の思惑、そして久遠寺老人と博行僧など絡み合う人々の過去と現在、そして思惑や野望、そこに組み合わさるぽっと出の関口君たちがごちゃまぜになりながら進むこの雰囲気はやっぱり京極夏彦にしか出せない面白さだなと再確認する作品でした。

妹と愛し合っちゃうシス&ロリコンや博行僧などのロリコン、そして僧たちの男色などここまで多種多様だともはや流石です。そしてそれらが原因で心を病んでいる…
やはり妖怪というのは人間の心の闇が作り出す化け物なんだなと。
なんだかさっきも言いましたけど、やっぱり終わってみると大体の人が心の憑き物を落とされている。そして今回は過去三作と違いみんなが傷を背負っているような雰囲気もなく、結構すっきり終わったような感覚があります。

それにしても小坂さん傑物すぎる。自分のためにそれとなく周りを巻き込み、おおよそ完璧な結界と世界を作り上げるとは。

やっぱり姑獲鳥の夏を読み直すべきかな…
思ったより登場人物覚えてなかったなとも思うし、読み直すべきなんかもな…


というわけで、今週読み終わった本は『鉄鼠の檻』でした。ジョロウグモもヌリボトケも買ってるのでこれから読もうと思います。
実は『氷菓』と『進化しすぎた脳』も読み終わっており感想を書かないといけないのですが、思ったより新作ゲームやらバイトやらが多く、後回しにしています。ちびちび書き進めて出していきたいと思います。

それでは最後まで読んでくださった方いらっしゃればありがとうございました。
著者Twitter:まがしき @esportsmagasiki

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