読書感想『ボトルネック』※ネタバレ注意
今週読んだ本は著作米澤穂信の『ボトルネック』でした!
初!米澤穂信でした。小説じゃなければ『氷菓』のアニメは大昔に見たことがあります。ほーたろー君はかなり好きでした。
氷菓もいつか読みたい読みたいと思いスルーしていたんですが、友達が貸してくれました。感謝。
ついでに氷菓も買いました。いつか読みます。
自分自身今までしっかりしたミステリーを読んできていないのですが、(シャーロックホームズは読みました)個人的にはトリックに重きを置きすぎた作品が好きではないんです。
やっぱり人の心の動きとかが好きなので、トリックに固執しすぎた作品よりはそこにいる登場人物が生きている中でちょっとズレてしまって人が死ぬという作品のほうが好きなわけです。
その面でみるとこの作品はドンピシャの作品でした。
この作品のまず凄かったところとして、人間の描写や世界観、町の描写だった。どれもこれも最低限の説明しかないはずなのに(そもそもこの本ページ数が少ない)しっかりと一つの町、コミュニティ、人々が見えてくるってめちゃくちゃすごいなと読んでいて思った。
主人公がほーたろー君によりネガティブ要素を足した系男子で、お姉ちゃんが自分を引っ張ってくれる元気な女の子なのは、氷菓でも見た(笑)。
作者の性癖というかそういう何かが感じ取れてとてもいい。そしてわかる。元気なお姉さんに引っ張ってもらうの最高だよね…
というわけでシリアスな感想へ。
読み終わって貸してくれた友達に感想として送った画像はこれである。
読み終わって真っ先にジンベエが出てきた。ジンベエと同じ心境で主人公の背中を押したくなった。そして背中を押される気持ちになった。
主人公はある程度何でも受け入れられると自己紹介してくれているが、これは逆に言ってしまえばすべてに無関心であるという意味だと経験則で思う。
心のセーフティーバリアが明確にあってそこまでならすべて受け入れた、という体で生きれば苦しむことがないというのはある意味でライフハックだとも思う。
いろんなものに関わるというのは疲れるし悩みも増えるし、逆に言えば極限まで関わるものを減らして、遮断して好きなものだけに触れて生きれば楽に生きれる。
「友達はいらない。人間強度が下がるから。」というわけだ。
これに対して別世界の姉は全てに関わりに行き、自分事のように相手の立場に立ち想像しようとする存在である。
主人公が別世界で見たのは、自分の立ち位置にいた姉がすべてに関わり、考え行動した結果、変わっている世界だったというわけだ。
主人公が自分を守るために、楽に生きるために切り捨てた可能性たちの未来を見せつけられたという残酷な世界だなと思う。
自分を守るために行動するよりも、周りのために動いたほうが最終的には自分のためになったのではないかという事実。
家族が壊れているのも彼女の死も全部自分のせいなんじゃないかと思い至ってしまい、主人公は死にたくなってしまう。
そこで彼女の幻想と姉だったものの幻想に語りかけられ主人公は歩み始める。
できることはまだある。残っているものがある。と歩み始めるともとらえられる終わり方になっていると思う。
(嫌な見方をすれば改めて死のうとしてるともとれるけど…そこを決めるのは人次第だろう…)
個人的にはジンベエメンタルになっていた。これからでも変えれるものがあるし、帰れるところがあると。
なんとも残酷で絶望的な励まし方だなと読み終わって思ったわけです。
誰にでもあの時こうしていれば、という瞬間はあると思う。
身近なところだと例えば学生の頃の自己紹介でもうちょっと明るく振舞えてたら友達が増えてたかな、とか。
好きな店だしもうちょっと通っていれば潰れなかったかな、とか。
好きな子に告白していれば未来は違ったかも!、とか。
誰しもこういう小さな後悔とかを積み重ねて生きていると思う。なんなら夢に見たり、たまにフラッシュバックして嫌になったり、蓋をして闇に葬ったり対応もさまざまだとも思う。
この本を読むと改めていろいろ振り返ってしまう。
でもそれも踏まえて今生きてるか?とも言われたような気がしてくる。そして少しはちゃんと向き合えるようになった気もしてくる。
過去と向き合うのはやっぱりきついし、その上これからのふるまいを少しでも変えるってのもきついんだけど、ちょっとずつやっていこうかなと思えるように背中を押してくれる作品だったと思う。
というわけで『ボトルネック』の感想でした。
そういえば真面目な主人公を読んだのは久々だったので全然ボケないな…と思ってしまった(笑)。
西尾維新作品は主人公がボケすぎなんだな…感覚が狂っている…
それにしてもめちゃくちゃ面白かったので氷菓も楽しみにしています。
それでは最後まで読んでくださった方いらっしゃればありがとうございました。
著者Twitter:まがしき @esportsmagasiki